アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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六角 鬼丈 - 「地・水・火・風・空」
東京武道館のこと-7
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東西アスファルト事業協同組合講演会

「地・水・火・風・空」

六角 鬼丈KIJO ROKKAKU


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東京武道館のこと
7

これからオープンデッキヘ上がっていきますが、だんだん上に上がることによって屋根が除々に近づいてきます。

これがオープンデッキなのですが、ここに新宮さんの「風」の造形を二種類つけています。隙間のようなオープンデッキには弓道場、大武道場とか小武道場の施設がそれぞれの表情で出くわしてくる。したがって、逆にいいますと自分一人でつくった町並みたいなものをここで表現してみたいと考えたわけです。

弓道場は矢の防御のため、全体をネットで囲まれていて、先ほどの説明のように斜めと平面方向にネットを一枚おきに貼っています。したがってこの間に透けた部分ができて風が通るようになっています。そうしないとネットの風圧が強くて、サポートの鉄骨がもっと太くなってしまうそのための工夫です。

道場利用者の玄関も、たいへんしつこいのですが扉も全部菱形模様でデザインしています。

正面玄関には大分の作家で熊井恭子さんのステンレスのテキスタイル作品を採用しています。織りなされた金属面はライティングによっていろんな波紋が生じます。熊井さんの作品は後のところでも出てきますが物的でなく現象的な作品で空的なイメージだとか火炎、炎のようなイメージとか。これもどこかで「地・水・火・風・空」とこじつけていこうという考えです。

玄関ホールに入りますと下駄箱はこの右手に並んでいて真正面は見せ掛けの玄関みたいなところです。昔はここに衝立があったようなところなのですが、この正面には、パリ在住の作家で津久井さんというステンレスの鉄線で全部溶接してつくる彫刻家にむしろ地とか水のイメージにつながるものをお願いしました。この彫刻は玄関から階段室に飛び出て、建物を突き抜けてホール前の中庭にもう一度飛び出していってます。

内部に入ってからホールはフラットな天井と波型に変化している天井に挟み込まれていって、その中でダクトだとかいろんなものを処理しています。さらに下駄箱の上にももう一度波をつけて、細かいテクスチャーから大きなうねりまで執拗な変化を追ったつもりです。

中庭に突き出した彫刻
中庭に突き出した彫刻
ステンレスによるオブジェ
ステンレスによるオブジェ

大武道場の中とかエントランスは丸柱が点在してますが、上部から下りてきている力を円柱で受けるように表現していると思います。

通路兼ホールの中央部は中庭に面する構成要素と各ブロックから表出してきている構成要素が、お互いに顔を出して、デザインがミックスされた内部の交差点として表現しています。

各道場の入り口には水盤が用意され水のイメージを点在させ、手を洗ったり顔を洗ったり水が飲めるようにし、道場の入り口それぞれに合せ形を変えています。

この武道館は構造として三つのブロックに分けエキスパンションしています。したがってホール内にできた継目はギザギザの波型の天井の中で水平にずれるように工夫しています。

オープンデッキの真下のホールは、全部柱は三角形にして交互にずれていっています。ですからこの柱から出ている二本の梁は平面的には正三角形ですが、正三角形が繰り返されていくアーチ梁です。突き当たりには弓道場に行くアプローチがあります。天井は大武道場側からせり出してきたイメージでストンと半分に立切って、半分は外部の関係がRCの打ち放しそのまま入りこみ特別の仕上げもしていませんし、スプリンクラーの配管が飛び出てもあえてそのままで放置しています。ちょうど半々に侵入しあったそのままを表現方法にしています。

ホールの上部にはに講師控え室があって、この部屋だけは実は平面が正六角形をしています。ここだけ自分の名前とちなんだ部屋をつくって、できれば最初に自分が使ってみたいとひそかに考えていたものです。

その部屋からホールを見下すと三角形が繰り返され交差している状況が分かり不思議と捩じれた雰囲気になっています。

中庭
中庭

これは先ほどからいっているホールに面する中庭には、渡り廊下が池の上にかかっていて上には「風」の造形が見えて、池の中にはステンレスの彫刻があります。このホールの中までを自由に人が出入りできて、武道を利用する人だけじゃなくても日常でホテルのロビーみたいに散歩がてら立ち寄って、この辺をぶらぶらして欲しいなと思っています。そういう気持ちがあったのですが実際はなかなか難しく管理上で問題が残ってしまって、申し出をすれば出入できる、そんな形になりそうです。

ステンレスの造形はステンレスの線を周辺にばらばらばらばら置かれています。見学者からどうしてつくったものをまた壊してしまうのですかといわれてなかなか説明に苦慮しているところです。

公共の建物ではなかなかこういうものを了解してもらうのに普段できないところが多いのですが、東京都は非常に積極的でこういう試みを良く理解してもらえ管理側も半分困った顔をしながらも協力的に処置してくれています。掃除したときなど、これは動いちゃあいけないのですかというと、作家は動かしても結構ですがそれ風に置いてほしい。とまあそういうお互いの関係を結んでいます。

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