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東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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北川原 温 - リアリティと概念
象徴的なものを配置していく
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東西アスファルト事業協同組合講演会

リアリティと概念

北川原 温ATSUSHI KITAGAWARA


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象徴的なものを配置していく
柏原タウンセンター
柏原タウンセンター

昨年春に完成した「柏原タウンセンター」という作品です。福岡市内の柏原という場所にできた団地のタウンセンターです。

このプロジェクトでは、建築を構成的に考えていました。つまり、それぞれのプログラムに従って、象徴的な意味を持たせた空間を敷地の中に配置していく、という方法です。ここでは、象徴的な要素と要素との間の空間、外部空間をむしろ主人公にして、象徴的な要素そのもの、固まりとしての空間は外部の背景にしていくという方法を採りました。アクソメ図を見るとわかりますが、非常に複雑になっています。

基本計画中にスケッチブックにいろいろスケッチしていたのですが、この段階では、外部というより、象徴的な空間をプログラムに従って配置していって、それぞれの相関関係をどのように位置づけていくかを考えました。それが次第に、むしろ象徴的な要素の間にある空間を大事にしていこうという考え方に変わっていったわけです。

この空間は団地の人々の通り道になっていますが、それ以上の機能はありません。最初の計画では空虚な空間を中心にもってきて、そのまわりにいろいろなものを配置していく、店舗施設、スポーツセンター、管理棟などがこのまわりにあって、集合住宅棟がその向こうにある、という配置だったわけですが、計画の段階でもっともっと複雑な外部空間をつくりたくなったわけです。

この外部空間は、たまたまその時の天候や時間によってさまざまな表情になります。外部空間を裏返して、外部の余白に内部を発生させ、外部を主人公にしようとしたわけですが、そうした視点で眺めると、また違った光景が見られます。

象徴的な要素を配置するという手法は、このプロジェクト以前からずっと引き続いてやってきた方法です。だから、象徴的なものとしてのアイディアはたくさんストックしております。例えば、インテリアでは壁も天井も真っ白い空間をつくって、そこに独自の強い個性をもった形態をレイアウトする、壁や天井の形を触らずに、それだけで内部空間を規定していく、というあり方などもその一つです。大きな空間の中になにかを置くことによって、その空間を別な空間にする、という方法です。

柏原タウンセンター
柏原タウンセンター

店舗棟の入口の小さな広場の部分にテントを架けています。

管理棟は黒い楕円形の建物です。これらもすべて、さきほどのインテリアの考え方と同じで、象徴的なものを敷地の中にレイアウトしていき、それによって、そこにある特別な空間の密度や方向をつくりだしているわけです。

小さなサンクンガーデンがあります。外部空間といっても、それぞれ相互に複雑に関連し合った外部です。一方にガラス張りの壁をもつプールと土の小山のように見える壁の間に隙間があったりします。「柏原タウンセンター」はどこから写真を撮っても必ず二つか三つの要素が入ってしまいます。つまり二つ家三つの要素に囲まれた外部空間というか、その間の空隙が写る。それは設計のときから意図していた結果なんです。

次も「柏原タウンセンター」と同じような手法で、いくつかの要素を組み合わせて構成しているものです。目下工事中で今年の10月に完成予定の予防医学センター「ユーフォリア」です。予防医学センターに組み込まれているいろいろな機能をグルーピングしていき、それぞれにある特別な形態を与えていき、それを敷地の中にレイアウトしていく、という手法を採用しています。

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