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東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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伊東 豊雄 - 近作を語る
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伊東 豊雄TOYO ITO


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ニつの水の応用としての建築
EXPO2000 ハノーバー
EXPO2000 ハノーバー
グアダラハラ現代美術館プロジェクト
グアダラハラ現代美術館プロジェクト

ドイツのハノーバーで2000年に行われる博覧会のためのインスタレーションのプロジェクトです。博覧会のためにテーマパークというエリアが設定されて、一つのテーマで五干平米ぐらいの展示が行われます。十一のテーマがあります。私は「へルス・フューチャー」というテーマを与えられて、そのためのインスタレーションをやっているのです。ここで今申し上げた二つの水という問題を結びつけようと思って、二つのスペースをつくりました。

一つは実際に水が貯えられています。大きな体育館のような建物の内部ですけれども、そこに水が貯えられています。それに向かってたくさんのマッサージ・チェアが並べられています。ちょうど海水浴場でみんな寝転がっているような、そんな風景を思い出していただければと思います。ここで水を見ながらみんな横になって、次のスペースヘ行くための順番を待っています。次のスペースは映像だけの部屋で、ここでは床にも壁にも身体に関わる映像がビデオ・プロジェクタによって映し出されています。つまり、ここではもう一つの水、つまりバーチュアルな水を演出します。この二つの水を介して健康という問題を考えるというのが当初の構想であったわけです。

しかし、だんだん考えているうちに、これは二つに分けなくてもいいんだと思うようになりました。ちょうど今日のわれわれが一方では水を飲みながら、一方では電子のネットワークに結ばれているように、それは決して別々の身体ではなくて、一つの身体にわれわれは統合しているのだということです。それと同じようにここでもまたこのニつの身体に見合うような、二つの水を重ね合わせたスペースにしようとしました。長さが百二、三十メートル、幅が四十五メートルぐらいのかなり大きなスペースですけれども、そこに三日月形の水を設け、その周辺は椅子を並べるスペースにしました。後ろにスクリーンがあり、そこに映像が映し出されます。

マッサージ・チェアというとデザインがあまりよくないので、ここではメカニズムだけ残して、全部きれいな布に覆われた新しいマッサージ・チェアをデザインしているところです。正面は下のほうが鏡になっていて、上のほうにいくにしたがって青空に変わっていくようなスクリーンを考えています。したがって、ここに座っていると自分の姿が反射されて小さな湖のような水になるわけです。天井から水の上やあるいはチェアの上に、さらにスクリーンに向かって約二百台ぐらいのビデオ・プロジェクタを使って環境的な映像を映し出そうと思っています。

広大な博覧会のスペースなので、ここにやってくる人も相当くたびれるだろうというわけで、ゆったりと座って水を見ながらへルスを味わってもらいたい。身体に関わる映像は、例えば人体に潜り込んでいったときのような、腸の中を歩いている様子であるとか、遺伝子、DNAが無限に広がっていくような映像を会場全体に映し出したいと思っています。

ちょうど昨日、ニューヨークから戻ってきました。メキシコのグアダラハラという町の仕事です。ジャン・ヌーベルやスティーブン・ホールなどいろいろな国の十人の建築家が集まって、新しい都市といえるぐらいのスケールの文化的なエリアをつくるというプロジェクトです。そこで私はコンテンポラリー・アートのミュージアムをつくることになりました。コレクションのある美術館ではありません。ここでは鏡を使用して、向こうに水と自然とが広がっていくようなスペースをつくりたいと提案しています。そこでまた映像によってつくり出される水と自然とが組み合わされたスペースができてくると思います。そうなればステージセットの中のスペースからもう一歩出て、建築的なプロジェクトに発展させることができるだろうと思っています。

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