アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
これは大阪府堺市に建つ集合住宅で、二年ほど前に発表したものです。構造は佐々木睦朗さんにお願いしました。
都市型の集合住宅というのはどうしても高密度にならざるを得ません。高密度になると、できるだけ詰め込もうと、たいていの集合住宅は片廊下タイプになってしまいます。南に開口がある箱形の住戸が東西に並ぴ、北側に長い廊下があるというものです。日本の集合住宅の典型的な姿ですけれど、このタイプの集合住宅の場合、風が抜けにくい、光りはひと部屋にしか当たらない、廊下は廊下という機能しかもたず、人と人とのコミュニケーションも生まれない、というようなことが問題点として生じてきます。私はこのことに対して常々疑問に思ってきました。誰もがその欠点を理解している片廊下タイプの集合住宅がなぜ今もってつくられ続けているのか、これに代わる集合住宅の新しいタイプはないのか、といったことです。高密度な集合住宅においても、住宅における大事なものをちやんと享受できるような集合住宅をシステムが提案されなければなりません。
そのために考え出されたのが、この「平成ドミノ」というシステムです。各住戸はメゾネットで、上階が広く下階が狭いタイプと、逆に上階が狭く下階が広いタイプの二種類の住戸があります。全体は、この二種類の住戸が、建物の中心に設けられた吹抜けを、螺旋状に回転しながら卍型に積み重なるというものです。四層で一回転する仕組みになり、システムだけでいえば、無限に回転させ、高くすることが可能なわけですが、ここでは二回転半の十層となっています。
中央の吹抜けには避難経路を兼ねた階段を設けています。また、上下階で面積が違うものを積み重ねますので、住戸と住戸の間に二層吹抜けの外部空間が生まれます。そこには植栽を施して、空中庭園がつくられます。そのため、どの住居も必ず二面以上で採光が取れ、かつそこから風が抜けるようになっています。三方を開放できる住戸をもつ集合住宅というのは、あるようでなかなかないと思います。ずいぶん無駄な空間を、とお思いになる方もいらっしやるかとは思いますが、レンタプル比は七十七パーセント、容積も九十四バーセント消化していますから、片廊下タイプの集合住宅と比べても、決して見劣りするものではありません。人が住むには、集合住宅であろうとも、光とか緑、風といったものがとても重要なのです。