アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
今日お話する「地域社会圏」というテーマは、2008年の11月に『新建築』の巻頭論文で書いたことです。これは横浜国立大学の大学院生課題にも取り上げています。なぜ私がこのテーマについて考えているかというと、現在の社会の組み立て方がなんとなく私たちの身体にしっくりなじまないと私自身がつねづね思っていたからです。
現在、建築をつくるという行為が社会の中で信頼感を失っている気がします。今日は建築の設計や施工に携わっている方がたが大勢いらっしゃると思いますが、皆さんは建築をつくるということが社会の中で重要な働きをしているという信念を持って日々取り組まれていることと思います。私もそうです。ところが私たち建築に携わる者のそうした信念と、社会の受け止め方が非常に乖離していると強く感じています。私はここ何年か建築家としての居心地の悪さを感じていますが、最近はますますその思いを強くしています。
皆さんはご存知かもしれませんが、私は邑楽(おうら)町で裁判[注1]を起こしました。これは和解という結果に終わりましたが、日本の社会は建築家や設計者あるいは施工者といった建築に携わる人たちに対して、非常に冷たいと感じています。私たちは、自分たちのつくる建築によって社会がよりよくなると思って努力をしているわけですが、そういう想いを好意的に受け止めてくれる環境が、失われていっている気がします。同じ思いを抱いていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。建築基準法や建築士法の改正の中身を読むと、まるで建築家や設計者が悪意を持っているように思われるほどです。私はこうした改正の方向はおかしいと思います。
しかしこのような状況になったのは、私たち設計者の側にも相当に大きな責任があると思います。今日は私の作品もお見せしたいと思いますが、同時にそういうことを一緒に考えていただければと思います。
[注1] 2002年5月に「邑楽町役場庁舎等設計者選定住民参加型設計提案競技」で最優秀賞となった山本理顕設計工場の計画案が実施設計終了後に通知なく破棄されたことに対して、山本理顕設計工場および設計競技に参加した建築家たちが原告となり、邑楽町を相手取って起こした訴訟。2009年六月に和解が成立した。
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