アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「福生市庁舎」も同じような考え方でつくった公共建築です。もともと敷地には古い庁舎が立っていました。古い庁舎の前の駐車場に一四階建ての建物をつくり、完成したら古い庁舎を壊し、跡地を広場にするというのが、福生市が当初描いていた構想でした。
市庁舎の周辺は低い建物ばかりで、すぐそばの河川敷から見るととてもひろびろとした風景が広がっています。私たちはそこに巨大な建物をつくるというのはどうかと考え、新築する建物を半分に分けました。まず新築した片方のタワーへ市庁舎の機能が入居した後、もう片方のタワーをつくるという計画を提案しました。
ふたつの建物の間を滑らかに繋いで、その上を市民公園のようなかたちで使えるようにしました。すると一階に巨大なフロアができるので、これを「フォーラム」と呼び、いろいろな活動ができるようにしました。「フォーラム」の上は丘の広場になっていて、その上に行政棟と議会棟のツインタワーが立っています。丘の広場にはトップライトが開いていて、「フォーラム」に光を落としています。これは夜になると、反対に「フォーラム」の中の明かりが丘の上に漏れてきます。
建物の表面は、5センチ角のレンガタイルと7ミリの目地で構成しています。目地の自の面積がかなり大きいので、単純なレンガ色とは少し違う見え方をしています。このレンガ色は、歩行床が壁と一体になっていること、そして市庁舎という公共建築が地域社会のシンボルであることを意識しています。白い色や黒っぽい色も試してみたり、模型もつくってみたり、いろいろと試行錯誤をしました。
中にコアはありますが構造的には外壁だけで建物を支えています。柱は下が444ミリで、上の一番細いところで196ミリあり、一層分高くなるごとにレンガ一枚と目地の分だけ柱の見付けが細くなっています。構造は格子状のPC (プレキャストコンクリート)を現場打ちで繋いでいます。ツインタワーなので、ひとつの型枠を次の建物の型枠にも使うことができました。そういう意味でPCはかなり効率がよかったと思います。
外壁と同様に床もPCです。最大で21.5メートルのT型のスラプを柱にのせて床を支えることで、スパンが21.5メートルの、柱が一本もない空間ができました。現場では、PCの柱を立て込んだあとにスラプをのせて、現場打ちで繋ぎました。スラプは21.5メートルもあるので、夜間にトラックで運び込みました。柱は一階の「フォーラム」の中に垂直に落ちています。外壁から丘に続くレンガの皮膜は、スカートがめくれ上がったようになります。スカートの部分は塔の部分とエクスパンションで結合されています。
「フォーラム」のカウンターのデザインは藤森泰司さんという若手の家具デザイナーです。カウンターの仕切りは可動になっていて、左右に動かしたり着脱することができます。
福生市は七夕祭りで有名な所なので、この丘の上が七夕祭りの時にかなり有効に使えると思います。市民の人たちが普段気軽に使うような場所になればと思います。