アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
戸建て住宅においても、建築が社会と関係を結ぶことは可能だというのが私の意見です。「ドラゴン・リリーさんの家」は街の公共施設のような住宅です。
四方のほとんどがガラス張りになっています。家の中は外からまる見えになっていて、施主の方は薄手のカーテンをかける以外はまる見えのままに住んでいます。生活が外からまる見えになっていることに、何の抵抗も抱かない方です。打ち合わせの時に、ガラス張りの住宅にしましょうかという提案をこちらからした記憶が私にはありません。初めからガラス張りの住宅にすることを前提にして設計をしました。
建物の道路を挟んだ先には私鉄が走っていて、ガラス張りのように見えています。近所の子どもたち以外は、あまり中をのぞき込むような人はいないそうです。台所の風景を見て皆さんは違和感を覚えるでしょうか。私たちは、台所を家の中で一番プライバシーの高いところだと思っています。それを外に開くというのは、とても抵抗があると思います。ところが一度開いてしまった途端に何の抵抗もなく使えてしまうというのはおもしろい。
この住宅は夜になると周辺を明るく照らします。敷地の周辺はなんとなく暗い街だったのですが、それが少しだけ変わったように思います。施主が非常に活動的な方で、周辺に対してオープンに住んでいるので、周辺の人たちともそれまでになかった関係を築くことができたのではないでしょうか。
住宅も地域社会の一部なのだと思います。地域社会は現在はほとんど崩壊しつつありますが、それは住宅のつくり方にも原因があると思います。民間の業者が提供している住宅は、壁と生垣で内部がまったく見えないようにつくっています。そんな住宅でつくられた街並みが地域社会をつくっていけるはずがありません。しかしこのような住宅がひとつできるだけでも、そういった状況は変わっていくのではないかと思います。