アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
今日は仙台にゆかりのあるカルロ・スカルパの話を皮切りにして、今私が考えていることをお伝えしたいと思います。
スカルパは1906年にベネチアに生まれ、1978年に仙台で亡くなりました。20世紀を生きた建築家の中で、実は最も示唆的な建築家のひとりではないかと思います。スカルパは装飾的なディテールや技巧、古い工法を復興させた、職人的・工芸的な建築家と見られています。そういう側面において確かに優れた建築家ですが、それ以上に私が彼の手法に強く惹かれるのは、単に細部の技巧や工芸品的なものを大切にする眼差しとは違う、もっと非常に新しい考え方の持ち主だと思うからです。
スカルパはたくさんの作品を残していますが、その大半が既存の建物の改修であったり、展覧会の会場構成であったり、いわばリノベーションの作家です。スカルパのリノベーションは単に古い建物を修復するのではなく、もっと創造的であったと思います。イタリア語では彼のした仕事をレスタウロと言います。英語で言うとリストレーションですが、これは単純な修復という意味ではなくて、むしろ創造的な修復という意味を持っています。つまり、古いものの中に現代に使い直せる新しい価値を見出し、それに新しいものを付け加えて、古いものと新しいものが一体になって初めて価値を持つような改修のことを意味しています。
ベネチアで生まれたスカルパは終生、ベネト方言しか話さなかったというきわめてローカルな建築家です。私は、そのローカルな建築家が20世紀のモダニズムの巨匠たちに匹敵するぐらい重要な仕事を残していると考えています。