アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

マークアップリンク
トップ
私の建築手法
古谷誠章 - カルロ・スカルパ考
スカルパの仕事が示唆するもの
2022
2021
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

2005 東西アスファルト事業協同組合講演会

カルロ・スカルパ考

古谷誠章NOBUAKI FURUYA


«前のページへ最初のページへ次のページへ»
スカルパの仕事が示唆するもの
パウル・クレーの展示室
パウル・クレーの展示室

1948年に会場構成をしたベネチア・ビエンナーレの「パウル・クレーの展示室」です。展覧会は終わってしまえばなくなりますので、これは写真でしか残っていない作品です。

ひと部屋の空間にクレーの絵を一枚一枚、析りたたみ屏風のようなパネルにはめ込んで立たせています。そのパネルはまるで勝手きままにあちこちを向いていますが、何かひとまとまりの気配・空間をつくっています。もちろんデザイン的に統一されていますが、まるでお湯の中に浸かっているかのような、バラバラの方向を向いているけれどひとまとまりでいるようなデザインです。そこにスカルパの原点があります。ひとつひとつの作品に固有の空間を与えて、それぞれの空間が連鎖して繋がっている。つまり、ひとつひとつの作品の個性を、統一したフレームに入れてしまうのではなくて、ひとつひとつに自立した空間を与えています。ルールで縛っているのではなく自由でいながら全体が繋がり合っています。

彼は建築の専門の大学を出ていなかったために資格もなく、不遇な30代を送りました。その頃、彼はベネチアグラスで有名なムラノ島にいて、もっぱらガラス器のデザインをして暮していました。そこで彼はものの物性や素材・材料の扱い方とそれらに関する感受性を養いました。彼がものにこだわった職人的・工芸的な分野に入っていくひとつの原因は、建築の空間をつくる前にプロダクトのデザインをしていたことです。

«前のページへ最初のページへ次のページへ»