アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
北イタリアのポッサーニョにある「カノーヴァの石膏彫刻陳列館」も増築です。もともとあった展示室はセンター通路で両側に彫刻作品が展示され、トップライトの均質な光が注いでいて、入口を入れば一目瞭然の空間です。それに対しスカルパは、増築部に明らかに強弱のある光の取り入れ方をしています。入ってすぐにある彫刻は逆光で真っ暗に見えます。影になっている彫刻よりもその奥に強い光を浴びている作品に目が行き、空間に奥行が生まれています。一目瞭然の空間ではなく、奥に吸い寄せられるように奥に入っていきたくなって、光がスポットライトのように当たっている作品を見にいかされることになります。そして振り返ると、先ほどの光の中に影絵のように立っていた彫刻が、暗闇の中に白く浮かび上がり、きめ細やかな姿を表します。ひとつの彫刻が光の当たり方で別の側面を持つことを見せようとしています。さらに奥へ進もうとすると、ある彫刻の後ろ姿が見えます。通常は来場者に向かって置かれているものなのに背中しか見えていません。前を見ないで帰るわけにはいかないので、回り込みます。そうするとその彫刻の正面を目にしますが、そこから見た景色にひとつとして同じものが繰り返されていないことが分かります。スリットがあったり、暗闇があったり、光が入っていたりとそれぞれが独立した要素でバラバラなデザインであるにもかかわらず、全体が見事に統一されています。お湯に浸かっている感じがあります。
スカルパは改修のデザインをいつも現場の床や壁に描いて決めていきます。これには訳があります。私たちが更地から建物を設計する時にはまず敷地を見にいきますが、その後は図面があれば設計していくのにさほど難しいことはありません。しかし、改修の場合は、天井や梁の状態がどうなっているかすぐに分からなくなるので、家に持ち帰って設計することはできないのです。スカルパは現場の近くやその建物内の部屋を借りていて、常に現場でデザインを考えていました。植木職人や庭師がその家の縁側でデザインを考えているような感じです。実際の場所に行ってその場に立って考えないとやりにくいですよね。リノベーションのデザインは、その場所に行って考えないとデザインが決めきれないという本質があります。