アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「から傘の家」外観。7440ミリ角の平面プランに、方形の屋根が架かる。
本日は、「キノコと建築」という、私にとっても初めてのタイトルで講演します。
みなさんは、キノコが好きな人と言えば、誰が患い浮かびますか。私もあまり数は思い付きませんが、唯一ひとり思い浮かんだのは、ジョン・ミルトン・ケージ・ジュニア(1912〜1992年)という20世紀を代表する現代音楽家です。ピアノを壊して、その壊したプロセスが音楽だと言ったり、沈黙も音楽の素材として使用したりと、非常に前衛的な音楽家なのですが、そのジョン・ケージは、キノコが大好きでした。実際、彼の食事はキノコばかりで、キノコ研究家としてニューヨーク菌類学会の創立にも関わっています。イタリアに滞在した際に出演したテレピのカルトクイズ番組では、菌類学について解答して多額の賞金を得るほどのキノコオタクでした。
建築家でも、キノコ好きではないですが、キノコと建築の話をしている人がいます。篠原一男(1925〜2006年)さんです。私たちが学生の頃は、住宅と言えば篠原一男、というぐらい大変なカリスマ的存在でした。篠原さんは、「民家はキノコである」[注1]として、民家の造形を自然現象のような無意識的なものとして捉えています。実際、篠原さんの初期の作品である「から傘の家(1961年)」では、本当に形がキノコに似ているので、篠原さんが言うのは造形としてのキノコだったのではないかと思ったりします(笑)。
[注1] 篠原一男著、『住宅建築』(紀伊國屋書店、1964年)「民家を意識的な造形であるよりは無意識的な、すなわち、自然現象に近いものと考えることが民家にとって正しい評価である」(50ページ)