アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
そういった、粒の集合体としての「キノコ」のような建築をつくりたいと、最近よく考ています。キノコのような建築とは、簡単に言うと、コンクリートのような重たくて強固で、四角い建築の対極にある建築だと思います。かつて、レム・コールハースは「コンクリートはノアの箱船だ」[注2]と、面白いことを言っていました。ノアの箱船とは、大きな嵐が来て大洪水が起こり、水がすべてを飲み込んだ後、水が引いた状態のことを指しています。コンクリートは一度固まってしまうと、分割のしようもなく、叩いても泣き叫んでも頑として首を縦に振らない頑固親父のように、どうしょうもなく取り返しがつかないというイメージがあります。
そのコンクリートが、動物としての生命体としての人聞にとって、本当によいパートナーと言えるでしょうか。もちろんコンクリートは、その分けることができないという強さによって、地震や風に耐えて内部空間を守る大切な役割を果たしていますが、言ってしまえばその強さは、コンクリートじゃなくとも可能で、それがキノコのような粒の集合体でも可能だと思うのです。ひとつひとつは小さくて弱いものだけれど、それが集まることで強くなる、そういうものに無性に惹かれています。
[注2]レム・コールハースウス著、『Delirious New York』初版は1978年。邦訳『錯乱のニューヨーク』(鈴木圭介訳、筑摩書房、1995年/ちくま学芸文庫、1999年)