アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「石の美術館」外観。石蔵と同じ素材である地元の芦野石を使用している。
それでは、その粒を感じていただきながら、空間の話をしていきたいと思います。
単に、空間や環境が、面白いかつまらないかということだけではなく、人間がこれからどのように環境と関わってくべきかという環境問題についての議論として、私の建築をご覧いただいてもよいかもしれません。人間は、人工的な環境を「像」という基本的な道具を使いながらつくってきました。その作業を繰り返し、積み重ねることで、人間は生物であるという基本から大きく離れてしまいました。そのことの方がむしろ、地球温暖化やCO2の増加といったもの以上に大きな問題かもしれません「根本的な生物性を取り戻すにはどうすればよいか」という問題に関わっています。
「キノコ」的建築の出発点は、「石の美術館(2000年)」の頃です。栃木県の那須にある、米を貯蔵していた古い石蔵を再利用し、石を素材とするアートやクラフトの展示空間として再生させるプロジェクトです。提示されていた低予算の中で、何ができるだろうと考えた時、ふと施主である白井石材さんの一言が気になりました。
「予算はまったくないけれど、うちの会社には石の職人がいます。彼らは何でもやるので、どんな難しいことでも言ってください」この言葉に思いつきり甘えて、職人さんふたりと、石を使った実験に挑戦しました。
ひとつは、石のルーバー。H型鋼に石の柱を抱かせ、その柱にスリットを入れて、そこへ40×120ミリの断面形状に切断した石のルーバーを80ミリピッチで差し込んでいきます。そのルーバーで石蔵を囲むように低い塀をまわしています。もうひとつは、石を積んでいく組積造本来の構法でつくる透明な壁です。隙間を開けて、石の粒っぽさを強調させながら積んでいきました。その隙間には、所どころに6ミリ厚の薄い白大理石をはめ込み、そこから漏れる光が、内部をぼんやりと明るくします。
このように石を使うと、石のルーバーも、石を積んでいった部分も、粒っぽい表現になります。普段は重苦しい閉じた空間をつくると考えられていた素材でも、逆に軽く拓かれた空間を生成できることが示せたように思っています。
左)「石の美術館」内観。薄い大理石から光が漏れる。
右)ギャラリー2。古い米蔵を再利用している。
左)石のルーバー 平面詳細
右)石のルーバー 断面詳細
左)石を組積した壁面。
右)石のルーバーと既存の蔵。
平面