アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「CAVA Market Headquarters(2007年〜)」は、イタリアのナポリのCAVA Marketという会社の本社屋のプロジェクトです。ナポリの採掘場で見つけたのが、ベスビオ火山の灰が固まってできた「トゥーホ」と言う名前の石です。火山灰なので、そもそも多孔質で固まり方が弱く、種が飛んできて石の溝に入ると、そこに根を張って木が生えてしまうくらい柔らかい。この石は断熱性も高いということだったので、外装材・断熱材としてこの石を使って建築をつくろうと考えました。そこに飛んできた種が根付き、将来長い時間をかけて、その建築の壁面や屋根に木が生えていく。自然と人工物が交じり合うことで、立体的な表情が生まれます。ここでは、柔らかい石の粒子をどのようにつくるかということが課題でした。コンペで石の施工者を選んだのですが、イタリアの石の加工技術は非常にすばらしく、最終的には、石の中にエポキシ樹脂を注入し、そこへステンレスの細いパイプを挿入して石同士を連結するというやり方で進めることになりました。
次は、スペインの「グラナダパフォーミングアーツセンター(2008年〜)」というオペラハウスのプロジェクトです。「グラナダ」の語源は、ザクロ。英語でポム・グラニート(Pomegranates)。まさに粒ですね。ザクロがよく採れた地方だったらしいです。御影石のことを「グラニット(granite)」と言いますが、御影石も粒が語源です。グラナダの建築も粒でいくしかないと考えました(笑)。
この街には、「アルハンブラ宮殿」というもうひとつの美しい粒があります。アルハンブラ宮殿の天井の幾何学は、西洋のクラシック建築のものとは異なり、直角を基本としない自由な幾何学からなり、それらが構造から装飾にまで展開されて全体を構成しています。この構成を現代建築へ移し替えるために、六角形の集合体でひとつの建物をつくること考えました。ひとつの六角形はホールの室内にまで拡張され、50人が座れる大きさの六角形ユニットが30個集まることで、1500人収容できるホールとなります。ひとつひとつの六角形が建築を支える構造となっていて、柱や梁はありません。
いちばん最近コンペで勝ったのが、スコットランドのエディンパラの北に位置する都市ダンディの「V&A at Dundee(2010年〜)」で、敷地はテイ川沿いのクレイグハーバー です。ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館の分館で、約6000m²の大きさでスコットランドの新しい文化的中心となるランドマークビルをつくりたいと、地元の人たちも燃えています。ここでは、地元の石材の粉を混ぜ込んだプレキャストコンクリートを粒とし、それを積み重ねてつくっていく建設方法を考えました。