アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「浮庵」外観。
次第に空気に関心が移ってきます。ワシントンのアメリカ建築博物館での展示作品「浮庵(2007年〜)」です。このプロジェクトも予算が限られていました。輸送費は非常に高いので、ここでは、旅行用トランクで簡単に持ち運べるようなパビリオンにしようと考えました。0.13ミリ厚の透明塩化ビニールシートのバルーンにヘリウムガスを詰めて浮かし、そこへスーパーオーガンザーという質量11グラム /m²の世界最軽量の布をかぶせて浮力とのバランスをとります。その膜の内側の空間を茶室としました。どちらも、たたんでしまえばトランクの中に詰め込めます。
中国のShanghai Gallery of Art(外灘三号)で行われた「超空間 INBETWEEN」展で出展した作品「エアブリック(2010年)」です。空気枕を繋いでいるのですが、空気枕の中の空気もすべて繋がっています。それがコンプレッサに繋がっていて、コンプレッサの空気を出し入れすることで、全体が呼吸しているような状態になります。生物は、細胞という粒子がありながら、その中にさまざまな液体が流れていますよね。そういった、粒が独立しながらも繋がっているという状態がつくりたかったのです。空気枕の材料はある程度強度のある、ETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)を使用しています。ヘルツォーグ&ド・ムロンが設計した「アリアンツ・アレーナ(2005年)」でも外壁に使われています。通常ETFTは、総かい加工をするのが難しいのですが、このプロジェクトでは熱熔着の技術で小さなユニットをつくっています。世界でも珍しいETFTの使い方です。今度はこの仕組みを、パビリオンではなく、実際の建築に使えないかと考えています。そうすれば生き物のように呼吸する建築ができるかもしれません。