アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
私たち人間は単眼形の生き物ですから、世界を「像(image)」だと考えています。しかし像というのは、世界のほんの一部に過ぎないのではないでしょうか。これは、建築空間をわれわれがどのように認識するか、というのを考える時にも面白い考え方だと思います。『新建築』のような建築雑誌は、誌面で像を提供してくれます。建築物を像で表現したものを見て、私たちはその空間を想像するけれど、像というのは実は環境のほんの一部をだけを伝えているだけで、光の環境だけをとってみても、人間の脳はいろんな情報を得ているのです。その秘密が、粒なのです。たとえば、壁に沿った道を歩いているとします。その時、どの要素がいちばん、私たちの行動を規定しているかというと、正面に見えている「像」ではなく、身体の側面の壁面の粒感なのだそうです。その粒の情報が脳に絶えずインプットされることで、私たちは道を感じて歩いていくことができ、その粒の変化によって、道が交差していたり、終わったりしたことに気が付くのです。
そのくらい、人間にとって像というものは、空間認識の一部分にしか過ぎないわけです。建築雑誌から与えられる像のイメージは、その建築の本当にわずかな部分しか見せていない。像以外の空間情報をデザインすることができれば建築は間違いなく変わります。