アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
生物にとって、ディタッチド、つまり剥がせるということも、佐々木正人さんから伺いました。たとえば、赤ん坊は、自分の手で剥がせるものにしか興味を示さない。それは、生物にとって環境から少しだけ切れてディタッチドという状態が重要だからなのです。私のやろうとしていることは、まさにこれでした。「キノコ」的なるものは、もごうと思えばもげてしまう形で地面や木に接続されていることが重要なのです。そのディタッチドな感じが、私たちを安心させるのです。
「安養寺木造阿弥陀如来坐像収蔵施設(2002年)」は、山口県の豊浦にある、土の粒の建物です。きっかけは、不思議な構法でつくられた土蔵との出会いでした。日本の一般的な土蔵は、土の塊ではなく、木造の躯体に土を塗ったものです。しかし、この豊浦の土蔵は土の塊であり、ある大きさの土の粒を積み上げてつくられていました。このつくり方は、普通の用語で言うと、日子し煉瓦になります。日干し煉瓦とは、アフリカの砂漠の民や遊牧民が、木や石が手に入りにくい土地で、土を水で繰り小枝や藁などの繊維を入れて乾かして、それを積み上げていく構法です。英語では「Adobe(アドベ)」と言います。その日干し煉瓦の構法が、その豊浦で用いられていたということに驚き、それをもう一度再生しようと考えました。ひとつひとつは少し変な格好をしていますが、これは地震の時に壊れてしまわないように、鉄骨の補強に引っ掛けるためです。
また、これは、国指定の重要文化財である平安時代の木彫の仏像を納める収蔵施設なので、最初は文化庁の方も収蔵施設を土でつくることに少し戸惑っておられました。これに対しては土の調温湿機能のシミュレーションを提出して、了解を得ました。空調機は入れていません。空調機のない収蔵施設は珍しい試みかもしれません。