アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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私の建築手法
内藤 廣 - 空間から時間ヘ — 時・時間・時代への眼差し
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東西アスファルト事業協同組合講演会

空間から時間ヘ — 時・時間・時代への眼差し

内藤 廣HIROSHI NAITO


全景

9.11のWTCの事件は、みなさん当然ご存知だと思います。そして今、われわれはその余波を感じながら生きているのだと思います。問題は、グローバルに広がっていくシステムと、ある特定の場所に立って生きざるを得ない人間との関係をどう考えるか、ということだと思います。抗いがたいシステムの中で、人間としての誇りや尊厳を失わないためにはどうしたらいいのかを考えていかなくてはいけません。このことは、実は建築のテーマなのです。建築を頼んでくる人は、その場所にどうしたら誇りをもって生きられるかと建築家に問いかけているのです。それは個人であっても企業であっても同じだと思います。

激しく揺れ動く世界、変革の時代に、頼りない政治、あてにならない経済の中で、どうしたら誇りや自信をもって生きていけるのかということが、多くの人にとっての最大の関心事です。そして、それを受け止めることができるのは建築なのです。立派なものである必要はありません。 お金をかければいいということでもありません。どうしたら誇りや自信をもって生きていけるのかという人びとの気持ちを受け止める力が、建築にあるということを建築家は自覚し、そのために建築がどうあるべきかを真剣に考える必要があると思います。

ちょっと面白い芸をやって人の目を楽しませるというのはブルータス的建築の価値のあり方です。そうではなく、もう少し本質的なことに目を向ける必要があるのではないでしょうか。それは、人がそれまで生きてきた時間や、そこで育まれた記憶であったり、また時間や記憶を踏まえた上での未来に対する意識といったものです。それを受け止めるような場所、空間をつくることが建築家に求められていることで、それ以外にはないと思います。そう考えると、9.11の情景も建築と無縁ではないのです。要するにこれは、誇りを奪われつつある人間の叫びだと思います。

Profile
略歴
1950
神奈川県に生まれる
1974
早稲田大学理工学部建築学科卒業
大学院にて吉阪隆正に師事
1976-78
早稲田大学大学院修士課程修了
フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所(スペイン・マドリッド)
1979-81
菊竹請訓建築設計事務所
1981
内藤廣建築設計事務所設立
1986-95
早稲田大学非常勤講師
1999
東京大学非常勤講師
2001
東京大学工学部土木工学科助教授
2002
同大学教授
受賞
1993
芸術選奨文部大臣新人賞
日本建築学会賞作品賞
第18回吉田五十八賞
共に対象は「海の博物館」
1998
くまもと景観賞「うしぶか海彩館」
建設賞選定公共建築百選「海の博物館」
2000
第13回村野藤吾賞
高知市都市美デザイン賞特賞
日本照明学会照明普及賞優秀施設賞
IAA国際トリエンナーレグランプリ
第42回毎日芸術賞
共に対象は「牧野富太郎記念館」
2001
第42回BCS賞
「牧野富太郎記念館」
2002
栃木県マロエニ建築賞
「フォレスト益子」
主な作品

「海の博物館」「志摩museum」「住居No.14 筑波・黒の家」「住居No.15 杉並・黒の部屋」「住居No.19 全沢の家」「安曇野ちひろ美術館」「うしぶか海彩館」「茨城県天心記念五浦美術館」「住居No.21 干歳烏山の家」「十日町情報館」「牧野富太郎記念館」「倫理研究所 富士高原研修所」「九谷焼窯跡展示館

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