アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
これは石川県の加賀市に竣工したプロジェクトです。日本の陶芸の歴史の中で「古九谷」という特筆すべき陶器があります。古九谷というのは、非常に質の高い陶器でありながら謎も多く、実は伊万里で絵付けをしたのではないかなど論争が絶えません。古九谷がつくられたのはわずか2、30年の間といわれています。そして、その古九谷がつくられなくなってから約百年後の江戸時代初期、古九谷を再興しようという目的で吉田屋窯がつくられたこともわかっています。しかし、それがどこにあったのかも不明だったのです。その吉田屋窯の窯跡が最近、発見されました。周囲には住宅地が迫ってきているところですが、ここで陶芸をしている方も、吉田屋窯の跡だということはご存じなかったようです。
再興古九谷を焼いていた登り窯というのは、歴史的な価値があると同時に、陶芸家からすると心のシンボルのようなもので、それを保護するための覆い屋を架けようというのがこのプロジェクトの発端です。ですから、覆い屋の設計が中心ですが、市長から、ここに建つ文化財になっている古い木造住宅の修復保存なども含めて公園としたいという希望があり、その計画全体のアレンジをしました。また公園ですから、トイレ棟も新築しています。
難しかったことは、発掘している場所が思いの外、広くて、どうやって屋根を載せるかということです。地面そのものが重要なわけですから、むやみに支柱を立てることはできません。また、石川県は積雪地なので雪荷重を見なくてはいけないので、構造の負担がかなり大きいということが分かりました。そこで、市の文化財の保護をやっている方と相談をして、手を加えてもいい四つのポイントを選んでもらいました。この四つのポイントを支持点として、アーチをかけるという、いわばトンネル状の構造を採用したのです。四つの支持点に杭を打って、点基礎の上に建物を載せています。
アーチは二重のスチール立体トラスになっていますが、トラスの方向が45度に傾いていますからアーチの円弧は楕円になります。ですから、これは楕円の集合体で、とても難しい構造体になってしまいました。屋根は落雪型でアーチに沿うように二段屋根で形成されていますが、楕円のため、上の材料と下の材料をつなぐ部材の角度がすべて異なり、とても複雑なものになりました。現場が非常に一生懸命やってくれて、工場で仮組をして持ち込んで建て込みをしました。構造計画は岡村仁さんと一緒にやっています。