アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
9.11のWTCの事件は、みなさん当然ご存知だと思います。そして今、われわれはその余波を感じながら生きているのだと思います。問題は、グローバルに広がっていくシステムと、ある特定の場所に立って生きざるを得ない人間との関係をどう考えるか、ということだと思います。抗いがたいシステムの中で、人間としての誇りや尊厳を失わないためにはどうしたらいいのかを考えていかなくてはいけません。このことは、実は建築のテーマなのです。建築を頼んでくる人は、その場所にどうしたら誇りをもって生きられるかと建築家に問いかけているのです。それは個人であっても企業であっても同じだと思います。
激しく揺れ動く世界、変革の時代に、頼りない政治、あてにならない経済の中で、どうしたら誇りや自信をもって生きていけるのかということが、多くの人にとっての最大の関心事です。そして、それを受け止めることができるのは建築なのです。立派なものである必要はありません。
お金をかければいいということでもありません。どうしたら誇りや自信をもって生きていけるのかという人びとの気持ちを受け止める力が、建築にあるということを建築家は自覚し、そのために建築がどうあるべきかを真剣に考える必要があると思います。
ちょっと面白い芸をやって人の目を楽しませるというのはブルータス的建築の価値のあり方です。そうではなく、もう少し本質的なことに目を向ける必要があるのではないでしょうか。それは、人がそれまで生きてきた時間や、そこで育まれた記憶であったり、また時間や記憶を踏まえた上での未来に対する意識といったものです。それを受け止めるような場所、空間をつくることが建築家に求められていることで、それ以外にはないと思います。そう考えると、9.11の情景も建築と無縁ではないのです。要するにこれは、誇りを奪われつつある人間の叫びだと思います。