アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
茅葺きの上にアイスクリームのトッピングみたいな草が生えていて、全体のバランスがすごくいいんです。自然素材の茅がピラミッド状に盛り上がって棟のところにちょっと緑があるというシンボル性みたいな使い方が上手くいっていると思ったんです。
この茅葺きは東北地方の岩子県の農家です。芽の上に草が生えています。これはニラです。乾燥したときにはニラが最後まで生き残ります。ぼくはこういうふうに白然が載っている屋根は上手くいっていると思います。
ニラがほとんどベレー帽みたいに生えているものもあります。これは芝棟という日本の伝統的な技術です。茅葺きのてっぺんに植物を入れる技術で、戦前には九州にもありました。熊本県にあったことがわかっていますが、主に東日本でたくさんつくられました。西日本では少ないのですが、丸州にもあったので、かつては日本全国に分布していたんだと思います。
ユリを植える場合もあるわけです。自然に生えたと思う人もいますけど、こんなところにユリが生えるわけはありません。ユリの球根を植えているのです。だいたい根茎や球根のものを使います。一番きれいなのがアイリス、イチハツという矮小のアヤメがあるんです。これは乾燥に強いんです。それからもうひとつイワヒバがあります。
もうボロポロで解体寸前です。もともとニラではなかったと思うんですけど、今はニラに取って代わっています。ニラは白い花が咲いて風が吹くとパァッと揺れてなかなかいいものです。
戦前にある植物学者撮った写真ですが、イワヒバです。苔の親玉みたいな植物です。
関東地方には芝棟が多かったという例です。箱根の旧関所の町並みですけど、寄棟のてっぺんに乗っているのもあります。東海道は、江戸から箱根まで、芝棟でできていたんです。安藤広重の東海道五十三次の絵を見ると、ところどころ書いてありますからわかるんですが、東海道の何分の一かは芝棟の街道であったわけです。これは明治の半ばに撮られました。箱根離宮がありますから、明治半ばの写真だとわかるんですが、ぼくはこの芝棟がとてもいいと思っています。
これは景色が日本難れしていますけど、実はフランスの芝棟です。日本とフランスのブルタ−ニュ地方のニカ所にしか芝棟は残っていません。二カ所に残っているだけでなくて植えてるものも基本的に同じです。日本でもイチハツを植えますが、フランスの場合はイチハツしか植えません。種類は圧倒的に日本のはうがいろいろあります。残念なのは日本のはうが管理が悪い。フランスの芝棟は非常に美しく管理されています。ホントに僧らしくなりました。
ぼくは、今まで二度行っています。今年は花の咲く時期を聞いて行ったんですけど、開花が遅れているということで咲いていませんでした。この村だけで五、六十棟あって、政府が保護しているんですけど、プルターニュ地方だけでおそらく干棟くらいはあるのではないでしょうか。
屋根は急傾斜で、雨水のはけを非常によくしてあるんです。それから、フランスは日本とは違って、空気が乾燥していて湿気が少ないので、茅の厚さが日本の三分の一から四分の一なんです。だから維持が楽です。これは六十度近い傾斜です。とてもきれいにイチハッを載せています。方法はまったく日本と同じです。
これはごく最近つくられたそうです。別荘地帯になっていてパリの人たちがここに別荘をつくりました。
次はベルサイユ宮殿の中につくられた農村の芝棟です。マリーアントワネットがときどきここで遊んだというわけです。マリーアントワネットがつくったちょっと奇妙な農村として有名なんですけれども、ここに芝棟があることはほとんどの人が知らないです。フランスの研究者にあの上に芝棟があることを知っているかと間いてみましたら、みんな驚いた顔をしますが、芝棟なんです。
世界の有名人で芝棟の建物に住んだのは、マリーアントワネットですね。それからもうひとりいるんです。水戸黄門です。水戸黄門が西山荘という別荘をつくって、そこで隠居しました。その西山荘の屋根にイチハツが植えられていて咲くんです。
水戸黄門とマリーアントワネットは芝棟兄弟になるのです。だからどうということはないんですけれども、そう思うと趣があるというか面白くなります。