アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
本日の講演会のタイトルは「Between Nature and Architecture」、自然と建築の間、としました。僕は北海道の田舎の出身で、子ども時代は森や雑木林の中で遊び、高校まで自然に囲まれて育ちました。それから大学で東京に出てきたので、これまでとはまったく正反対の環境に放り込まれました。ただ、東京は意外にも快適だと思いました。特にいわゆる商店街のようなヒューマンスケールの街は居心地がよい。建築を勉強していくうちに、どうして北海道の自然の中で育った自分が、同時に東京の人工物に溢れた場所を快適に思うのかを次第に考えるようになりました。森の中は木々や枝、葉っぱ、下草といった比較的小さなものや中くらいのものが自分の周りを柔らかく取り巻いていて、守られているような感じがします。ただそれは閉ざされたものではなく、どこに行くにも草をかき分けて、自分で道を選ぶことができる開放感がありました。僕はこのような「開かれた守られ感」に心地よさを感じていたのだと思いました。ヒューマンスケールの東京の街も、看板、自転車、電線、電信柱、2階建て3階建ての小さい家など、出っ張り引っ込みが多くあり、無数のものに柔らかく包まれているような安心感があります。ただこれも窮屈なものではなく、商店街や路地を自分で好きに選び取って自由に歩くことができます。片方は美しい自然、一方は都市ですが、開かれた守られ感があるという点で空間の成り立ちは共通しているような気がしました。目で見て違うものだとしても、身体感覚として空間を感じる時にどこか共通しているようなものがあるのではないかと思いました。
それ以来僕は、人工物を設計していても、自然の持っている魅力や成り立ち方と人工物を近しいものとして考えられるのではないか、さらには、自然と人工物が混ざり合ったり溶け合ったりする世界をつくることができるのではないかと考えています。時にはダイレクトに自然を持ち込むこともありますが、僕が考えているのは、より本質的な意味で自然と人工物が共存することです。自然と建築というと、建築の内部と外部の関係にも繋がってきます。内部はどちらかというと建築側で外部は自然側ですが、それを分けずにどう関係付けるか、どう溶け合わせるか、ということにも関連していきます。内部と外部を考え始めると、今度はプライベートとパブリックという話にもなります。内部はどちらかというとプライベートです。パブリックは外ですが、その間も明確に分かれているわけではなく、どこかで繋がりながらもしっかりと距離を取るような社会と個人の関係にまで広がっていきます。自然と建築の話は、単に自然とフィジカルな建築物の話だけではなくて、内部と外部、あるいは個人と社会、さらに単純さと複雑さのように、抽象的なレベルも含めたいろいろな議論と繋がっていると思います。
本日お話しするプロジェクトでは、自然と建築の関係を話していきますが、同時に、社会の話、内部と外部の話、持続可能性の話にもなってきます。さまざまなところに広がっていく建築の本質的なお話をしたいと思います。
自然と、ヒューマンスケールの東京の街
講演する藤本壮介氏