アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
必ずしもそうでもないと、僕は最近は特に思います。「Co-Innovation University(仮称)」や「太宰府天満宮 仮殿」のように、チャレンジをしていきたい方々が増えている気がします。昭和の時代は経済が成長していたので、うまくいった前例を繰り返していけばよくなっていきましたが、新しいテクノロジーや社会の状況によって、昔の価値観が変わりつつあります。堅い方法を繰り返していたら、せっかくつくったものが価値のないものになってしまうのではないかという考えの方が、公共でも民間でもディベロッパーでも増えている印象はあります。
僕たちは、新しい価値を一緒に生み出してくれるんじゃないかという期待を込めて、呼んでいただいていると思います。それに対して、本質的にこれからの時代に何が必要か、あるいはクライアントのビジョンを実現するには何がふさわしいか、またその街をどう捉えればよいか、ということを真剣に考えています。状況が多様で、今まで通りにいかないからこそ、面白いユニークなものを求められる場面が増えてきていると思います。万博の大屋根リングもかなり不思議な案だと思いますが、万博協会や協賛企業さんに説明に行った時も、瞬時に理解して、面白い、素晴らしいと言っていただけました。マイナスなリアクションは一切なく、むしろこういうふうに世界を捉えていかなきゃ駄目だよねという共感の言葉がすごく多かったんです。
日本は今、よい意味で変わりつつあると思います。実感として思いますし、期待しています。若い方々はますます、固定概念にとらわれることなく、本当の価値、あるいはこれから生まれてくるであろう面白いこと、わくわくすることは何だろうかという意識で向かっていただくと、公共であれ、民間であれ、大きなプロジェクトであれ、小さなプロジェクトであれ、魅力ある場所や都市や建築のプロジェクトが増えていく気がします。
「太宰府天満宮 仮殿」は確かに特殊な状況で、地面を掘ると必ず文化財が出てきて調査が始まってしまうので、地面を掘れませんでした。そのため基礎が地面に載った状態です。さらに屋根に木を載せているので、荷重がたくさんありました。一方で、軒の部分は、参拝者の方がいらっしゃるので、あまり太い柱を落とすことができないし、したくない。軽やかに、浮いているような屋根にしたいという状況でした。
構造は、Arupの金田充弘さんというクリエイティブな方と一緒にやっていますが、柱は当然あってよく見るとそこそこ太いんです。手前の部分に柱を落とし、その先は全部キャンチレバーで飛ばしています。屋根は中央にいくに従って厚くしているので、その分梁せいが取れます。このように、構造と機能性と表現がうまくすり合う地点を見つけることを常に考えています。また、正面から見た時にいちばん手前にある垂直材は、雨樋です。奥の柱が黒いのでほとんど見えず、前の雨樋だけが見えてくるようにしています。構造の話を構造だけで解決するのではなく、荷重を担っていない雨樋を構造のように見せることで、軽やかに見せています。建築はただ単にデザインをするだけでなく、どうつくるのかを考えると、その時に構造がいちばん肝になるので、構造がどう見えてくれるとよいのかを考えながら検討しています。現実的に必要な寸法が出てきた時に気にならない、あるいは出てきても大丈夫なように、いろいろなことを駆使しながらやっています。