アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
宮脇さきほどのビデオでも最近の作品が紹介されていましたけれど、では、これからやろうとしていることとか、具体化できそうだなということ、これからの方向みたいなことはなにがありますか。絵本も含めて。
新宮絵本は「じんべえざめ」でちょっとぐたっとしてしまいました。
宮脇レンゾ・ピアノの関西新空港のプロジェクトはどうなんですか。
新宮プロポーザルとしては発表してもいいんですが、まだオフィシャルにしちゃいけないんです。つまり、レンゾ・ピアノとしては私に依頼したいのですが、一方には空港のための人工島がようやくできたという段階で、建築家がもう美術作品まで決めているというのはまずいんじゃないかという意見もあるんです。しかし、建物を建ててしまうと、建築家の好みとは関係なく美術品がもち込まれる可能性は高いんですね。それを建築家側からいえば、欲しいのはこれだというだけの権利はピアノにあるわけです。
宮脇私がよくやる方法はある意味では施主をだますんですが、たとえば最初は特殊壁とかいったりするわけです。処女作ではガールフレンドに壁に絵を措いてもらいたいというか、描かせたくて、ところがその費用がどこからも出ない。そこで、壁の最初の見積りをスウェーデン産の御影石にして、その予算をとってしまうわけです。それで設計している途中で「やはり、ここは石は重いですね。絵に変えましょう」といって、その高目に入れておいた予算を使うわけです。だから関西新空港の場合も「天井を特殊仕上げにしたい」とレンゾ・ピアノにいわせておいて「動くようにしました」といわせればなんとかなるんじゃないかな。とにかく予算をとってしまえばいいわけですからね。(笑い)
新宮そういう意味では、レンゾ・ピアノもかなり悪いヤツだと思いますけれど、そんなことを聞くと宮脇さんほどじゃないようですね。
実は最近の仕事なんですが、いま、大阪であるビルをやっています。
宮脇まさかビルを設計しているんじゃないでしょうね。
新宮建築家に手伝ってもらってね。オフィスビルです。
実は、このクライアントは、新しいビルをつくるのに、私の作品が好きだから、会社のシンボルとしてなにか具体的なCIになるようなものをつけて欲しいというのがそもそもの最初だったんです。そこから話が始まって、ついでに建物のほうもやりませんか、ということになっちゃったんです。建築家の友人たちにこの話をすると、大抵もう絶交だといわれますけれどね。でも少しくわしく話をすると、それじゃ建築じゃなくて彫刻だといって許してくれる人もいるんです。
どういうことかというと、約36.5メートルの塔に縦に八つ、風で動くオブジェがついています。いちばん上のが5.5メートルありまして、いちばん小さいものが50センチでこれは一階の入り口にあり、下に向かって遠近法的にだんだん小さくなっていきます。
上から三つは建物の外に飛び出していて、他の5つは建物の中のらせん状の階段室にあります。そして一枚の鏡が45度の角度で外側向いて立っているというか、空間にぷら下がっています。するとエントランスロビーに入ってきて、否応なしに鏡が目に入り、そこに空から8つのオブジェ全部が映っているわけです。
同じプロポーションのオブジェがだんだんに小さくなってついています。外に出ている
3つは望遠すればかなりランドマークになります。筒の下の鏡のところを覗くと全体が見えるということでは、全体はちょうど潜水艦の潜望鏡のような構成です。そして、順に階段を上っていくと、下のはうはたいへん小さいですから、ものすごく高いところまで上ったような錯覚を起こすんですが、下を見ると、外の道路を歩いている人が小さく鏡に映っているというわけです。
宮脇あなたのことだから、いくら話を聞いても、実際にできて見にいってみないと、よくわからないね。
新宮ただ、鏡1枚を吊るすために建物を建てたようなものです。19922年の2月には完成します。建物は途中までできていますし、オブジェも目下どんどんできています。同時進行です。
宮脇さっき、ちょっといいかけてた、水を空に上げてなんとかするといってたのは、まだ企業秘密ですか。
新宮防水膜をハンモック状にして、そこに水を張って、うまく言葉では表現できませんが、「ひとひらの海」というか、海の一部を切り取ったようなものをつくります。不透明だけれど光は透過する膜です。明るい水の学んだ底というか、ジンベエザメのお腹のようなものをイメージしています。そして膜には穴が開いていて、オーバーフローした水が下のほうに非常にたくさんの滝になって落ちていきます。そのデイテールを目下いろいろ考えているところです。
宮脇それは実現するプロジェクトですか。
新宮実現するでしょう。まだこれからプロポーザルするところです。ただ、その町で上水道が100パーセント完備できた記念のものなので、クライアントが断れないような、水の美しさを鑑賞するためのミニマム・アーキテクチユアをつくろうとしているわけです。
宮脇最後に、風という不定型な形のないものの中に不定型なものをつくりながら、なぜ部分はあんなに幾何学的な形をしているんですか、という質問をさきはど控室でしゃべっていたんですが、その辺をもう一度説明してもらえますか。
新宮さっきも話に出たアレキサンダー・カルダーとか、不定型の形をつくった人はこれまでにもたくさんいますね。それらに比較すると、私の作品は定規で引きやすいというか、コンパスで描きやすいというか、発注しやすい形になっています。あまり有機的な形は使いません。
宮脇それは、わざとそうしないんですか。
新宮そうかもしれません。しかし、いまのところは、ジオメトリックな形が安定して見えている、それが動いたときにグジャッと崩れておかしな形になるということの面白さに魅かれています。いかにも風がなくても風に吹かれているような形よりは面白いんです。
真面目な人が突然冗談をいうとか、機械が急に笑い出すといった感じというか、ユーモラスをやりたいんです。でも、見る前から笑わせてしまうのではつまらないということなんです。
宮脇でも、初期の仕事は見る前から笑えてしまうものだったですね。
新宮いちばん最初の仕事はカラーグラビアのページ向けによくできていたんです。だから非常に数多くの雑誌に掲載されましたけれどね・・・。いまはもう、あまり人気がないんです。つまり実物は面白いけれど、写真に撮ると面白くないといわれるんです。
宮脇いいじゃない。だって所詮、動くものを写真で見せようなんていうのが無理じゃないですか。
新宮実際にその場所にきて見てもらわないと、あるいは入ってもらわないと、もうわからないところにきているともいえますね。
宮脇そろそろ入るという造形も出てくるわけですね。アッ、僕はまたあなたの企業秘密をいっちゃったかな。
新宮いっちゃいましたね。(笑い)
でも、まあそういうことです。
宮脇随分、長い時間しゃべったわりには、適切な質問ができなかったと思いますが、どうも新宮さん、ありがとうございました。(拍手)