アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
最初は「北山山荘」です。これは兵庫県西宮市にある、市の文化施設兼迎賓館都でもいうべき建物です。
敷地は六甲山系の中にある西宮市の北山緑化植物園の一画にあります。北と東が国有林に接し、南西方向は植物園の向こうに大阪湾が遠望できるという恵まれた場所にあります。全体の配置は敷地の西にある門を入ると、ほぼ中央に母家があり、その東の主庭と流れの向こう、敷地の東の端に茶室がある、という配置です。
主庭を母家の東側にしたのは、北と東の国有林ににわのデザインを展開させることができるからです。自然の風景がそのまま庭につながる、という恵まれた環境での当然の選択ですが、実際に自然の山の景色と人工的な庭を違和感なく融合させるのには、造園家のすぐれた技量と豊かな経験が必要とされるところです。 門は、軒桁を支える柱と内側の門扉と棟木を支える柱の芯をずらして建てています。ずらすことによって動きが生じますし、門扉が閉まっているときでも、柱と壁の隙間から中の様子をかいま見ることもできます。柱の位置を少しずらすだけで、いろいろな効果が現れるものです。
門の左手には、大きな石積みの擁壁があります。華奢な木造の門と一種のコントラストというか、重いものと軽いものの対比の面白さをよく表しています。
門を潜りますと、母家へのアプローチになります。植栽を密にして、意図的に閉鎖的なアプローチにしています。玄関の入口もそれに準じたデザインです。 この玄関前の土庇に腰壁をつけ、二枚の壁の重なりによって、壁面に芽緒案のコントラストをつくり出し、さらに土庇の空間を少し強調して、玄関前の空間構成に立体感を与えることを意図しました。
この腰壁の内側を左へ進むと、玄関を通らずに直接立札席に入ることができます。この腰壁は立札席の前では軒桁までの壁になり、立札席の入口が露になるのを防いでいます。この壁に切った大きな下地窓は、門を入ったときのアイストップにもなっています。そして、さらにこの壁を延長した塀が、玄関前の庭と東の主庭を隔てています。この壁一枚で空間の重なりや仕切り、さらに明暗の変化をつくり出していることになります。
玄関を入り、土間続きの通路を左に進むと、さきほどの立札席にいたります。ちょうど床の間の脇を通って入ることになります。この床の間もわざと床柱と床框をずらしたり、洞床のように壁の陰の空間をつくり出したりして、空間に動きを生み出すことを意図しています。
もう一度玄関に戻り、畳老化を右手に進みますと、まず次の間から二の間、そして一の間に辿りつきます。実は、玄関の床の間と床脇の障子の後ろが一の間なのですが、大きな家ではありませんので、わざと少し遠回りをすることで、距離感や空間の連続性や変化を体験してもらうために、このような動線をつくり出したのです。これは一の間にいたるアプローチでもあるわけです。この間にいろいろ情景の変化をさり気なくつくり出したいと思いました。