アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
十二畳の一の間と、八畳の二の間はそれぞれ別個に使用することもできますが、本来の姿は二の間は一の間の次の間です。但し、多人数の場合は二つの座敷を連続して使えるように、庭に面した開口部や天井のデザインは共通にして、同質の空間になるようにしてあります。一の間の床の間でも二枚の壁を立て、空間の重なりと明暗をつくり出しています。陰の空間の存在は気になるもので、全部見えないほうが面白いものです。これも玄関の前の土庇の腰壁と相通ずる試みです。
床の間の障子を開けると、一方は玄関に、他方は次の間を経て南側の縁座敷までつながります。実際には開け放つことはない障子ですが、空間の連続性を案じするために設けられたものです。東側の庭に対しては、一の間、二の間とも半入側と土庇を経て室内の空間が外部に展開します。和風の空間の典型的な姿です。この庭の景色も一の間を焦点として展開しています。一の間を取り巻く他の空間と同様に、この庭も一の間を装飾する空間の一つであると考えています。
数寄屋は庭園と密接な関係を求め、共存してきました。外部空間とコミュニケーションをする術を知っている建築です。庭園以外の外部空間との新しい関係もあり得ることと思います。
母家の屋根は、入母屋と方形の組合せです。やわらかい感じを出すために、少しむくりをつけています。入母屋の妻は軽快な感じにするため、垂木仕舞いにしています。このあたりの納まりは、昔からいろいろな方法があろますが、今回はこのような手法を採用しています。もう少ししっかりした形したければ破風板をつけますし、逆にもっと軽快にしたければ、茶室の屋根によく見られる木舞けらばという手もあるわけです。
次に茶室ですが、この茶室は母家と主庭を挟んだ位置にあります。不特定多数の人が利用することを考えて、オーソドックスな四畳半台目の積になっています。また、材料の取り合わせもごく一般的なものといってもよいと思います。茶室の土庇から母家を見返すと、建築と庭園の関係がよくわかるはずです。お互いに庭の中の点景としての役割を果たしているのです。こういう風情は、和風とか数寄屋のとっては捨てがたいものです。もちろん意図的にこのような情景をつくり出しているわけですが、さきほども申し上げましたように、ついつい庭に頼りすぎているような気もするのです。
茶室の土庇の奥には、壁を一枚つくり、土庇の空間がそのまま裏へ抜けるのを防いでいます。しかし、完全に遮断しては数寄屋になりません。壁の上部は吹き放ちとし、目通りには小さな下地窓を切って、空間の連続性を表現しています。矛盾しているようですが、空間を仕切りながら、一方では連続性を表現しようとするのも、数寄屋の特徴の一つなのです。