アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
光の変化の装置です。当時、多層構造についていろいろ考えていました。アクリル板にさまざまな光の要素をつくってコンピュータで操作します。光の作曲、つまり光のオーケストラのような装置です。自由に作曲できて光の演奏をすることができる装置です。要素が多く、しかも重ね合わせを行いますからまったく予想しなかった複雑さと形態を誘導できます。
来年また、コペンハーゲンでこういった作品をつくる機会がありますので、これを展開し、今度は平面の重ね合わせではなく三次元的な重ね合わせを考え、時間の変化に対してより明確なモデルをつくってみたいと思っています。
空間と自然との重ねあわせについて、オーバーレイが意識的にできるようにつくった森の中の住居です。実際にガラスに映っていく森の変化の様相と融合し、次つぎと建築自体が変貌していきます。四季・朝夕のプログラミングが概念的になされていますが、これをもっと厳密にやっていくとどういうことになるのか、現在思考中です。
暑いところですから室内にはトップライトの光をあまり必要としませんが、その光が差し込むことで天井の様相論的変化を発生させることを意図しています。
十二枚のアルミニウム面とガラス面で構成される面を削り取りながら全体のファサードを形成し、そのファサードが立体化することによって光の全体的な変化が増幅されていく「装置としての立面」を考えました。日が出たり雲に遮られたりなど、時刻や天空状態の変化による明るさを非常に敏感に捉えます。
光が弱く影が出ないときはぼんやりした感じです。夕日を反射している状態では金色になります。時間の変化とともに光が面の中でハレーションを起こしていく状態が観測されるのですが、三六五日そのようになるというわけではなく、きれいに図式的に現象することはむしろ少ないのではないかと思います。空がまっ赤に染まるような夕暮れどきには、乱反射が「都市は燃えている」という感じにまで高まってかたちというものが消失していくのがわかります。
このような建築のつくり方を考えていったときに、自然と建築との間に一種の応答性が発生します。例えば裏側のファサードです。非常にプレーンにできています。それは朝の光と呼応します。全体的には光の応答性を計画したといってもいいのではないかと重います。
演劇舞台の小さな茶室です。環境が茶室的でないところに改めて伝統的な茶室をつくるということはありえないことですから、フィクショナルにこの茶室をつくりました。壁にスリットと子窓を開け、その光が舞台装置としての茶室に干渉していくよう計画を立てています。
この頃、光のレシーバーとしての屋根とはまったく違ったアトラクターという概念を見つけるのですが、そうした建築を場に変えていき、それを誘導する原因となる装置をつくってみました。
ここでも同じように時間とともに変化するファサードと屋根をつくっています。インテリアもそれに対応し、光の影響が発生しやすいかたちで時間的変化が可視的になるようにつくっています。
ノーベル文学賞を受賞された大江健三郎氏の母校を建て直したものです。円筒形の音楽室と絵画室との間に中庭と諸室を配置し、さまざまな経路をつくっています。地形に合わせた多層構造で計画されていることがわかるかと思います。周辺には文字どおりノーベル文学賞の舞台となった四国の谷の森が展開しています。
比較的建築の中で時間を捉えていると思う作品を紹介してきました。それと同時並行で高橋鮎生さんに即興演奏をしていただきました。
高橋さん、上野さんにこれから数曲を演奏していただきます。スクリーンにはアフリカの集落からはじまり、イラク、イラン、東欧、南米、地中海、ヨーロッパ、そして最後にまたアフリカへ戻るという映像が現れます。演奏していただく曲ですが、最初にヴィラ・ロボスというブラジルの作曲家の作品を十二弦ギターで演奏していただきます。二曲目からは彼のオリジナルで、全体的に高橋鮎生氏の作曲と考えていただいてよろしいと思います。
(高橋さん、上野さんによる演奏。スクリーンには次つぎと世界の集落が映し出される。)