アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
墨田区の指名コンペで勝ち取った仕事です。「湘南台文化センター」をやっている頃にこのコンペがあり、デザインのテーマがオーバーラップしているところがあります。東京の下町で、車が入れない道路の多さに驚いてしまうほどの密集地です。市役所の分室が立っていた場所にさらに大きなものをつくろうということでした。地下は水が出るので、「湘南台文化センター」で実現したように地下には建物を埋めることができません。
北のブロックは、和室や陶芸室や学習室があり、従来の公民館を継続していきます。そして、西ブロックは発表の場所としてのホール、プラネタリウムなどが加わりました。東ブロックは新しい情報センターやAVライブラリーなど、メディア工房です。
三つのブロックに機能を分割していながら、融合的に結合していくため建物を、ブリッジと外側に均質的なパンチングメタルのまん幕を張って一体化を図っています。
私はできるだけ外に向かって柔らかな立面をつくろうとしました。中で活動している人が、ガラスを通してダイレクトに見えるのではなく、シルエットや動きがゆるやかに見えるようにしたいと考えました。パンチングメタルのサーカス・テントは、高い光のときには中が少し透け、寄るになるともっと透けて見えたりします。このまん幕を均質に張るためにも、その一体化された構造が必要でした。二重の面フレームと、ファザードのサブストラクチャーをうまく仕上げるために、またできるだけ均質な細かいフレームで後ろ側を支持しながらこのパンチングメタルを張るために、構造を一体に解くというむずかしいことを構造家に要求しなければなりませんでした。
プラネタリウムは、天空の風景の中で落語会をしたりする意味で音響設備をもっている小ホールになっています。新しい生涯学習のための機能としてエクビジョンホールと多目的ホール、そしてリハーサル室があります。それから、公共建築が担わなければならない市民の学習や文化活動のプログラムを提案していくための情報センター。その上に映像ライブラリーがあり、映像を通してさまざまな活動をしていくための試写室などがあります。さらにその上がメディアコーナーになっています。私たちは新しい機能をもつもの、古い機能をもつもの、そして発表の場所を、八本もブリッジを付けて交差させました。例えば、陶芸をしようとする場合、ライブラリーで映像によって学習、次にコンピューターで絵を描いてみる、また焼き物工房に行き、出来上がったらビデオで収録。何かをやることをさまざまな動きの中で捉えていこうということです。
私は本当に使われる建築にしたいと思い、与えられたプログラムを使う側に立って見直すことを心がけてしまいます。そういうプロセスで、町の人や市役所の社会教育の担当者だけではなく、もっと横断的に文化に接している人、都市をつくっている人など各部の係長クラスの人たちと何度もミーティングをしました。そして私が考える使用者側に立っての形態を説明し、ときにはデモンストレーションをして、それをさらに市民の町づくりの人たちに見てもらい、対話的プログラムをもって見直そうとしました。この施設についていっしょにもう一度運営を考えてほしい、私たちが残してきたプログラムを読んでぜひもっと具体的に話してほしいと語りかけることにより、みんなで考えるという市政が活発になりました。今もひき続きドイツにある市民が自主運営をしている施設を見学したり、またそちらと交流をもったりして、運営や企画についてミーティングが頻繁に行われていて、私はとてもうれしく思っています。