アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
建築を始めるときに、都市デザインの方法論的なものや、都市の多様性や、都市のグラウンド性を考えつつも、実際の建築は意外にも自然景観の中の建物が多かったわけですが、先ほどのダムのような自然の中の仕事をしていくうちに、それが多様性、マルティプリシティーとして通底する何かを認識することが可能なのではないかと思い始めました。二元論的な人工と自然という対比を自分の中で壊して、何か新しいことがいえないだろうかと、自分に課したような気がします。
今、ダム工事が進められている場所に、事業説明ホールを計画することになりました。どんなダムができるかなどを一般市民に説明するためのホールと、ダム工事監督署をもつ建物です。丘の先端部にあり、将来回りは湖水になります。上流湖水に対して一番開かれている角度であること、対岸の管理棟方向をちょうど指し示す方向に建物の先端部が向くこと、という具合に、工事中も将来の状況の中でも動かないものに対して、いくつかのラインを選び取り、それによって地形の一部のような建築を設定していきました。
もとより建築は、コンクリートにペンキを塗ったりするものですから、実際の土とまったく違うものです。現実の土と比べると、完全な異物なわけです。ところが、発想のレベルの中で、それが一つの軟らかいミディアムのようなものをもつかもたないかによって、比較的大地と連続するような方向にいったりいかなかったりすることがあると思います。また、この建物についていうと、四百メートルほどのところに巨大ダムが建設されていたので、ダムの重厚感と連動するように建築物のプロポーションも相当分厚いものになっています。