アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
去年の6月頃、東京のギャラリー・間っていうところで「フルメタルジャケット」という個展を開きましたけれども、これはアナーキテクチャーの延長的なもので、またなぜそういうタイトルにしたかといいますと、ひとつはメタル、金属の素材が好きでけっこう自分の作品の中で使うということを始め、ちょうどその頃スタンリー・キューブリックの「フルメタルジャケット」という映画がありまして、もちろんそこからタイトルは借りたのですが、ジョーカーという兵士が登場して、彼は自分の被っているヘルメットにBorn to Killedすなわち殺すために生まれてきたという文字を書いています。同時に彼は胸にピースバッジを飾っているわけですね。彼は上司になぜかと聞かれると「分かりません。ただもしかしたら無意識に人間の獣性みたいなものを意味しているのかも知れない」ということをいったので、自分の今まで考えてきたことと共通点があってタイトルを使わせてもらった。もうひとつは、良い悪いは別としても自分のやっている仕事、特に都内の住宅のプランニングが非常に防衛的になってきているディフェンシブなプランニングをしていることに気づいたわけです。これはそもそも東京という、ある意味では徐々に非人間的な優しくない環境に対して、自分だけのしっかりプロテクトされたコネクスト、そういう場所を確保する意味でそういう構成が多いと思うのです。したがって外壁は鎧兜的なメタル材で覆い、一生懸命回りから中身を守ろうとしている。いったん中に入るとこれはまたうって変わって柔らかい、自然な、温かい空間づくりを一応意識しています。 ここでも内外まったく違うようなスタイルのもの、雰囲気のものをひとつのコントラストとして使うことが好きなんでしょう。
今日お話と同時にスライドなどを通してご紹介する「見える建築・見えない建築」というのは、このアナーキテクチャー、フルメタルジャケットの延長線上にあるものです。ただ、今ではどちらかというと単独の建築の中でアナーキテクチャー的な、または矛盾するような二重性があるような表現を現わしてきていますけれども、今はどちらかというとひとつの仕事の中ではなくて、僕の事務所が今している仕事全体の中で見たときにそういう相反するような形、内容の仕事が多いのではないかと。
アナーキテクチャーでひとつ付け加えたいのは、今までどちらかというと非常に便利なデザインの切り口でしたので、表層的な二次元的な扱い、つまりファサード建築がアナーキテクチャーの中では多かったと思います。残念なことでもあります。今後のひとつの反省としてもっとアナーキテクチャーという言葉が意味するもっとも深いところを今後できたら追求していきたいなと、表層的なところから卒業して、もっと建築的な立体的な形でそのテーマが利用できたらいいかなと思っています。ただあくまでもこれはいろんな形、いろんなやり方、いろんなテーマのたったひとつに過ぎないです。
それではこれからここ12年間ぐらいに手掛けてきたアナーキテクチャーを初めフルメタルジャケット、そして現在やっている、またはやろうとしている見える建築・見えない建築をスライドを通してご紹介したいと思います。