アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
これはフルメタルジャケットのナンバーIになりますが、渋谷区宇田川町派出所の一番最初の提案です。これは7,8年前から東京都と警視庁がいっしょになって文化デザイン事業というのを始めています。数寄屋橋でできた山下和正さんのが第1号で、われわれのが第4号になります。このプログラムの主旨は小さいながらも公共施設を若手建築家にやらせて上げようということと、しかるべき場所にはそれなりのお金をつかってそれなりの交番をつくろうということがありまして、だいたい毎回5,6人の若手建築家が招かれてインタビューに自分が考えていることをA4一枚のシートにまとめていくわけです。この左側上にありますのがそのとき提案したポリスボックスではなくプランターボックスです。回りがあまりにも建築でいっぱいでしたのでいい加減もう建物は止めましょうと、ポップアート的な巨大なプランターボックスをパブリックファニチャーとして置きたい。そういうことを提案したところ東京都の審査委員たちは非常に気に入ってくださって、一応建築家として選ばれたのですがそこから警視庁に回されてああだこうだいわれて、植木は諦めないといけない。主にランニングコストの問題が発生したんですが、そこからいろいろな提案をしていって、下のピノキオ案ですとか上のタンク、大砲案、いろいろもっていったところほとんど蹴られまして、ある意味では時間繋ぎに斧みたいのをもっていったところなぜかこれが気に入られ、多少の修正をした結果ほとんどその通りできたと。これは外壁はすべて亜鉛鉄板貼りで先端に鏡面仕上げが多少使われております。公共施設として比較的これは成功したんじゃないかなと思いますのはご覧の通り非常に分かりやすい顔が描かれています。顔といっても非常に抽象的な顔ですので見る人によっては連想することがさまざまです。たとえば鷲に見えるとか像に見えるとか戦艦に見えるとか帽子に見えるとかいろいろあるわけです。そういう形で見る人によって観念性が生まれたんじゃないかなと思われます。
これは後ろ姿です。左上に付けましたのは雨どいです。イメージは言うまでもないと思いますけれども、どうせ描いて提案すれば蹴られるのが分かっていたので黙ってつくってしまったのですが、案の定クレームがつきまして壊せと命令が下されたんですが、非常に捨て難く、どうしたら残せるか考えた結果ベトナムの反戦運動の場面を思い出したんです。それはある兵隊が向けている鉄砲の中にヒッピーが薔薇をさしているシーンだったんですが、これだと思って、さっそく東急ハンズに造花の薔薇を買いにいってさしたところ何か呆気無く許されていまだにこのまま残っています。数年に一度は警視庁の方で新しい造花をさしてくれているみたいです。交番というのは日本独特の施設で、もしそうであればこれが世界初の床の間と中庭付きの交番だと思います。
これは千駄ヶ谷の新亜飯店という中華レストランです。クライアントは僕の高校の同級生なんですが、予算がないとき僕に頼んでくる友達でこのときも非常に厳しい予算で、3年前でしたけれども厨房も空調も全部込みで坪60万で上げてくれと。3年前といってもけっこう厳しかったのですが始めたところ、実はこれは築20年ぐらいのマンションの1階にある店で、前の店を剥がしたところ本当に汚い古い駆体が現われたんです。ひとつのアナーキテクチャー的なチャレンジとしてこの汚れをきれいなシックな、なおかつエレガントな店づくりに利用できるか挑戦してみた店です。壁は20年前からの駆体そのものにまったく手を加えず露出しています。あまりにも汚い壁だけは白塗りしましたけれども、後はまったく20年前の通りに、その当時、左官屋さんが補修したときの落書なんかもかいてありますが、まったくいじらずそのままアートみたいな形で回りに額縁を飾るように演出してみました。その額縁としてこのようなキラッと輝く鏡ですごか黒のベルベットのベンチとか黒のテーブル、椅子を使って何とかシックな大人のムードをつくったつもりです。床が広くとれましたので使える予算はほとんど床に使いまして、このようにいろんな素材をコラージュとして描いています。ここでは御影石、那智石、ビー玉、中国の古いコインなどをモルタルの中に埋め込んでいます。木煉瓦、真鍮のロット、またはハツリなども使っています。ビー玉や中国のアンティックコインの数があまりにも多く、最初は左官屋さんにやっていただいていたんですが、あまりに多い数とこちらの注文が多いことから逃げられちゃうんじゃないかと、最終的にはオーナーである友達と僕とで施工までしてしまった例です。この新亜飯店をご覧になったシュウ・ウエムラというブティックの社長さんが非常に気に入って新しい新宿の店の設計依頼があったのですが、今まではどちらかというと女性っぽい無難なきれいな路線から変えてやっていきたいということから新亜飯店的なお店をお願いしますということで、ここでは女性の店を非常に荒っぽく、着飾るというよりもヌードに表現してみたものです。オーナーサイドからのディスプレイがあまりにも多くてちょっと惜しいところはあるんですが、だいたい意図は掴めてもらえると思います。床はモルタルの中に新亜飯店同様いろいろ埋め込んだり、出来合いブロックを積み上げてその間にガラスを渡すとか、または壁面に鉛のシーツをぶら下げて演出するとか、非常にラフに美女と野獣をテーマに描いたお店です。
これは飯倉片町のほうでデザインしたブティックユウヤという約70坪ぐらいのスペースを誇る店ですが、ここにはもともとスラブの段差があって、それを利用しステージをつくっています。といいますのはホテルでホールを借りてファッションショーを行なうよりも、できれば自分のところでやって経費を節約したいというオーナーのご意向があってこのようにデザインしました。すべて床、壁は豆砂利の洗い出しです。その中に2700角のスチールグリッドを多少ふった形で埋め込んでいます。オーナーの希望で京都の禅寺竜安寺、銀閣寺などの砂のモチーフを何らかの形で描けないだろうかということをこのような真鍮で描いてみました。
これは代々木のほうに建てたアルテリア・デザイン・スタジオというインテリアデザイン事務所です・これも非常にシンプルなボックスを小高い丘の上に座らせているだけです。ここからの眺めが残念ながらあまりきれいでないとくことから、それをある程度ぼかす意味でパンチングメタルのスクリーンをコーナーに被せています。 さらに中側に小さなパティオを設けて外と中のインターフィエス、バッファゾーンとして演出しています。
このように光はふんだんと入り風も入りながらなおかつある程度回りのシーンを消してくれている。そういうシャワー的な機能を果たしてくれています。ご覧の通りこの中庭は非常に狭く広いところで約900ミリ、狭いところで300ミリもない一皮なんですが、ここで植えた竹の効果というのは馬鹿にできないということから、今はもっと大きいオフィスの計画、高層ビルの中でもこのようなアイデアを採用しています。
これは代官山のほうで建てたオンワード樫山のファッションビルですが、指名コンペで約1週間の間に案を提出しなければいけないということから、あまり時間をかけられなかったのでサイズで勝負しようということから、最初からこのような30分の1の大きな模型をつくってもっていきました。オンワード樫山さんにとってこれは小さいながらも非常に意味のあるシンボリックなビルなんです。といいますのは今までどちらかというとオーソドックスで保守的なデザインを追ってきたオンワードがこれをきっかけにフランスのジャン・ポール・ゴルティエというアバンギャルド的なデザイナーを導入して新しいイメージを売っていきたい。そういう意味でこれは建築というよりも建築を装った大きなメッセージボード、看板として見ていただいたほうが正解だと思います。ここではキーワードとして「剥ぐ」、オンワード樫山の古いイメージを剥ぐという意味のもとに上から鉛、石、コンクリート。低層部では透明ガラスを通してジャン・ポール・ゴルティエを通して今後のオンワード樫山の常に新しいイメージをメッセージしていくというコンセプトにもとづいています。
これは先ほどの新亜飯店のオーナーのチャイナチャイナという中国の骨董品屋なんですが、彼は新亜飯店で自分のポケットマネー稼ぎにいくつかの骨董品を展示しては売って儲けていたんですが、けっこうそれが商売に繋がるということに気づき、本格的な店を青山の紀ノ国屋の裏のほうに約16坪ぐらいの店舗を借りて開けました。このときも無茶苦茶な予算で、全部込みで500万で上げてくれという厳しい枠がありましたが、当初出た見積りが1000万円で設計変更、仕様変更したりして結局また自分らの手でやっていかなければできないだろうということで、そういうプランニングをしました。たとえばウィンドウディスプレイにはガラスにもの砂の山を盛って、直接陳列してディスプレイする。要するにここにお客さんがきて掘り出し物を探していく。そういう単純明快なコンセプトです。床には既製品のブロックを強いたり、壁にはメタルラスという下地材にまたわれわれが5.6人集まって土壁を貼ったり。これはもっと多い面積を土で覆うはずだったんですが、けっこう時間と手間がかかりまして、途中でいやになってこれくらいでいいかということで終えた作品なんですが、前には砂の山ですとかビー玉の川ですとかある程度自分の中で連想した中国の風景を現わしています。空にはこのようなドラゴンを装ったような陳列棚が飛んでるとか。これは余談ですが、今年の商店建築社の30周年記念を祝うコンペがあったんです。ここ3年間『商店建築』で紹介された作品の中から1000名の読者が投票した結果、これが物販販売部門で最優秀賞を獲得した作品です。初めていらっしゃるお客さんは回りの商品に目を取られ、何人かビー玉の川に落ちては転んだりしているらしいです。幸いに日本だからできた作品でアメリカでしたらもう裁判沙汰になっていると思います。