アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
現在、建設が進められている温室です。敷地は最上川沿いに設けられた全長三キロメートルほどの公園で、この温室は2002年夏に開催が予定されている「緑化フェア」のパビリオンになります。
この公園では、自然の摂理をわれわれの生活に活かすためのさまざまな実験が行われる予定です。山形はフェーン現象で夏期、非常に気温があがりますが、そういったときには建物の前面につくった池の水位を上げてクーリング効果を高め、冬期には逆に水位を下げるといった試みを考えています。この温室は、公園の全体計画を中心になってまとめられた東京大学農学部の堀繁教援と協力しながら、設計を進めました。
屋根はすべてガラスでできています。接合部での水の納まりが気になるところですが、ガスケットジョイントを工夫したり、屋根形状を逆円錐形、つまりロートを切り取ったような形状にすることで解決しています。梁はスチールのポックス梁。これとネット状のワイヤーがガラス屋根を支える構造です。
ここでも、空気の流れが大きなテーマで、私なりに考えた新しい方法をいくつも盛り込んでいます。今まで建築において技術といえば構造に関する事柄でしたが、これからは空気の流れにその比重は移ってくるのではないがと思います。空気のシミュレーションで問題になるのは、データを出すのにものすごく時間がかがることです。立体における、風のエレメントを考慮した熱分布を測定しようとしても、ちょっとした開口部の有無や風向きの変化で状況が変わってしまうので、計算が複雑になってしまうのです。この問題に対しては、コンピュータの性能が向上するのを待つしかありません。今後は、このような空気に関するシミュレーションと構造に関するシミュレーションを連動させることで、環境に適応し、かつ構造的にロスの少ない建築ができるようになるのではないかと考えています。
九谷焼で有名な石川県加賀市の住宅地の真ん中に、古九谷よりもさらに古い最古九谷の登り窯跡が発掘されました。20メートル角ぐらいのものですが、これを文化財的に保護するため、覆屋を架けるという仕事です。
かなり雪が降るところなので、落雪型の覆屋をつくりました。クライアントの加賀市は、「海の博物館」を見ていたものですから、木造の架構を提案すると思っていたらしいのですが、木造ではなくスチールにしました。構造は岡村仁さんにお願いしています。地中梁をつくったりすると遣跡をかなり損傷しますので、四カ所の杭基礎でこの架構を支持しています。屋根は、二重の立体トラスです。
私は、コンペが得意ではない方だと思います。特に形を提案するコンペには数限りなく参加しましたが、ことごとく落ちています。十日町情報館にしても五浦美術館にしても、コンぺではありますが、プロポーザルであって形を描いてはいないのです。ちひろ美術館のときも形を描いていません。文章とコンセプトだけです。
ですから、島根県芸術文化センターのコンペは、正直申しまして、よく通ったなと、われながら感心しています。指名された建築家の方がみな高名な先生だったので、逆に思い切って提案したことがよかったのではないかと思っています。
施設は、大小ふたつのオーディトリアムと美術館からなります。面積は2万平方メートルを超える巨大なもので、このような大きな施設を手がけるのははじめてです。
屋根には、地元、島根県益田市でつくられている石州瓦を使うことにしました。石州瓦は、1,300度近くの高温で焼き締めてつくるために、表面に釉薬のガラス質が溶け出し、非常に耐久性の高い瓦が出来上がります。いろいろ調べてみますと、通常の燻し瓦だと50年ほどしか耐久性がないのに対して、この石州瓦は100年ぐらいは楽に性能を保持できるようです。それと同時に、この場所は、中国から黄砂もやってくる、中国の近代化の影響を受けて酸性雨や酸性雪も降るというところです。それならば、この石州瓦を鎧甲のようにオープンジョイントで使って、耐久牲を高めていく方法があるのではないがと、この案を煮詰めていきました。ですから、屋根だけでなく、壁もすべて瓦で覆っています。平面的には、真ん中に45メートル角ぐらいのコートヤードを設けています。そして、そのコートヤードのまわりに美術館やオーディトリアムが配置されています。