アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
2001年春から東京大学工学部土木工学科で教えることになりました。なぜ教えることになったかというと、篠原修先生と巡り逢ったからで、このことは私の一大転換点になりました。篠原さんのご専門は土木ですが、「土木と建築はもっと交流をしなくてはならない、もっとよい関係をつくるべきだ」とおっしゃいます。一方、建築の世界に属する私は、建築界がとても偏ったものになってしまったのではないか、何か病を罹っているのではないかという思いを抱くようになっていました。その病のひとつは作品主義、あるいはスターシステムという言葉でいい表すことができるかもしれません。そのような話をお互いにするなかで、土木でもデザインを教えてみたいという気持ちがふつふつと沸いてさたのです。
図2は、建築と都市と土木の関係を書いたものです。私はこの三つがもう少しつながり合っていると思ったのですが、実際にはまったく切れていることがわかりました。分野としても、行政機構としても切れていて、交流もありません。この境界を外していくためにはどうしたらいいか、ということを最近よく考えています。最終的に出来上がった環境というのはひとつなのですがら、建築と都市と土木がもっと連携して密接につながり、ひとつの環境をつくっていくべきです。景気が悪いからといって何もしないのではなく、これから100年先まで見据えた価値をどのようにして生み出すかということにもっと踏み込むべきだと私は考えています。
9月11日の事件のことなどを考えますと、建築、都市、土木といった分野を超えた、ものをつくる力、仮に建築力といってもいいかも知れませんが、その意味の大きさを感じずにはいられません。環境や人口、民族問題から経済格差に至るまで、さまざまな分野で世界の仕組みが軋みをあげている現在、その軋みを念頭に置いた上で、身の回りにある日常をどのようにして支えるかということを考えることが、本当の建築力なのだと思います。