アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
西澤これは僕が個人でやっているもうひとつのプロジェクトですが、中国の天津市に建つ予定の戸建て住宅プロジェクトです。これは現在、中国の人たちが実施設計を進めているところです。
敷地はきわめて大きく、その中に数多くの戸建て住宅と、いくつかの集合住宅が建ちます。住宅だけでできている都市をつくるという計画です。山本理顕さんが全体のマスターアーキテクトで、山本さんの下に僕とアトリエワン、宇野求さん、小嶋一浩さんという四チームが集まりまして、共同設計のようなかたちで全体のマスタープランをやりつつ、住宅を分担しあって、それぞれ設計するようなプロジェクトです。
プログラムは戸建て住宅ですが、延床面積が600平方メートルという大きな戸建て住宅です。普通日本で戸建て住宅というと、100平方メートルくらいから、大きくても200平方メートルですから、いかにこの計画の住戸が大きいかおわかりになろうかと思います。ここは中国ということで土地が広いということもあるでしょうし、建設費も安いということもあるのかもしれません。この600平方メートルというきわめて住宅的ではない大きさに僕は惹かれまして、その大きさを最大限楽しめる住宅をつくろうと思いました。
ここで僕が考えたことのまずひとつは、平屋にして上空を開けるというか、なるべく圧迫感のない低いボリュームをつくつて将来的に空地を上空に残すということです。また、600平方メートルということをいちばん実感して、かつ楽しめる構成が平屋だと思い、すべての部屋を平らに並べて、美術館のように渡り歩けるようにしました。
もうひとつ考えたことは、40LDKという間取りです。いろいろな部屋がある。日本の住まいのように4LDKもしくは5LDKにすると廷床600平方メートルの場合、各部屋が異常に大きくなってしまいますので、それを避けるという意味で部屋数を増やしたということもありますが、むしろここでやろうと思ったことは、部屋をいっぱいつくることで、いろいろな個性の部屋をつくれる、たとえば自分の趣味の数だけ部屋をもてる、といったような状況です。図書館があったり、映画を観る劇場のような空間があったり、スポーツジムがあったり、茶室があったり、好きな趣味の数だけ部屋をもつということです。日本だと、音楽が好きで、テレビを見るのが好きで、読書も好きな人は、たいていそのすべてをリビングかベッドルームのどちらかで実現します。そういう意味では空間と機能が一対一の対応をしていません。しかし、この住宅では、それらが全部別の部屋になります。住宅全体が都市のような奥行きや立体性をもち始め、巨大でかつ不透明な存在になっていきます。部屋それぞれの大きさはまちまちです。バスケットコートがあったり、娯楽室があったり、茶室があったりします。
コンクリート造、しかもラーメンではなくて壁構造にすることが前提です。壁構造の方が型粋が複雑ではないのでつくりやすいだろうということで壁構造としました。ただ壁構造であっても、室内が暗くならず、なるべく室内のどこにいてもある程度の明るさをもつことができるように穴を積極的に開けていくことでラーメン構造にきわめて近い空間の雰囲気がつくりたいと思っています。600平方メートルですから奥行きも20メートル以上と深くなりますが、建物を外から見たときに、建物の向こう側にある緑地の雰囲気が見えるようにしたいと思いました。コンクリート造でありながら、透明な連続性がある空間をつくりたいと思っています。ここでは、そのための大きな窓をつくり、それが建物全体を貫いていくような構成を考えています。