アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
妹島次は私の仕事です。去年一年で基本設計、実施設計をやって、今年の春から現場に入っていて、来年三月にできあがる予定の建物です。コンペで始まった仕事で、場所は群馬県の鬼石町。東京からですと車で二時間くらい、山に囲まれた小さなまちです。その中心に、もともとは芝生広場と呼ばれ、今はスポーツ広場と駐車場になっているところがあるのですが、そこに体育館と小さなホールをつくるという計画です。
こういう山に囲まれた小さなまちの中に大きな規模の建物をつくるのは、ボリュームとして大きすぎます。常に使われれる建物ではありませんから、ボリュームに関しては余計に気を使う必要があるように思いました。そこで、みんなが日常的に楽しめる広場のみたいな場所にしたいと思い、体育館とホールとその運営のためのオフィスの三つを分棟配置にすることを提案しました。もともとこの敷地は自由に歩けたところなので、分棟配置により敷地の真ん中を通り抜けられるようにしました。また、そういうところを自然に通っていくと、体育館やホールで何が行われているかがわかり、その施設が身近に感じられることを意図しました。ですので、建物のかたちは機能で決まっているというより、ランドスケープから積極的に決めています。
体育館かつホールは天井高が必要なので半地下にして、見た目には平屋のようになっています。そういった比較的小さなボリュームに囲まれた芝生広場と、エントランス広場と、体育館から出てきたところの広場の三つがあって、それぞれを自由に行き来できるようになっています。広場やそれを結ぶ道を歩いていると、内部が見てとれますし、逆に中からも外の様子を見ることができます。
分棟ですが、それぞれの建物の柱は、全体をまとめるひとつのグリッドの上にのっています。広場や道から見るとひとつの大きな屋根のつながりが見えてきて、分棟とはいいながらもひとつの建物が意識できるようになっています。
体育館の屋根の梁はスギの集成材で、それをスチールの柱が支えています。建物には曲面ガラスが多く用いられているのですが、湾曲して内部が細くなっているときには広場が身近に見えますし、だんだん広がっていきますと広場が離れていきます。できるだけ体育館とかホールといった内部が、外部の子どもの遊び場と自然に接するようにしたかったのです。外が遠くなったり近くなったりするなど、内外の区別なく、いろいろな体験ができるようにと思っています。