アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
伊東 最後に若い人たちに向けてのメッセージをお話しして終わりにしましょう。
藤森 今いちばんの危機は、建築家の創造力というものをどう発揮するかが分からなくなってきてしまっていることです。世の中でつくられている建物は、ほとんどが既視感に満ちている。その中で、どうやって新しい時代の建築をつくっていくのか。私の場合は建築と建築の外にある自然との関係に注目した先にヒントがありました。モダニズムでは、建築にとって外部の自然との問題をいいとも悪いとも言わず、触れてきませんでした。それに対して、自然と建築を取り巻く現代の技術の接点をどう持たせるのかというのがこれからの大きなテーマだと思っています。私は手の跡が残るようにして建築をつくっていますが、その方法が新しい時代の建築をつくる方法として一般的だとは思っていません。まだ最適な方法が分かっていないんです。建築家の拠り所が個人の創造力であるならば、若い人たちには創造力を遺憾なく発揮して新しい時代の建築というものをそれぞれ探してもらいたいなと思っています。
伊東 まだまだ皆さん、モダニズムの世界の中でものをつくっているように感じています。石山さんのお嬢さんである石山友美さんが監督を務めた「だれも知らない建築のはなし(2015年)」という映画を観ていると、アメリカのピーター・アイゼンマンやチャールズ・ジェンクス(1939〜2019年)は、西洋のモダニズムの視点から建築の話をしているなと思いました。私はずっと彼らのような西洋の大都市を主戦場とする人たちにウケたいと一生懸命考えていたんだけれども、2011年の東日本大震災以後、都市ではないところにも建築はあるんだと思い始めました。今日何度か話にも出たけれど、われわれのつくる建築は、西洋の人たちがつくるモダニズムとはどうしても違うんだから、じゃあ私たちのつくっているものは何だろう、ということをもう少し顕在化させていってほしい。それは自然や環境との関係といったところから見えてくる気もしますが、そのことに若い人がもっと敏感になるべきだと思います。あまりにも鈍感すぎる。モダニズム的視点で洗練されたものをつくろうと思ったらわれわれよりはるかに若い人たちは優秀だし、頭もいいし、すごいと思う。しかし、それ以上のものはまったく違うところにあるということをもう少し認識して、すごいことをやってやるんだという気持ちを持ってほしいです。では今日はこのくらいで終わりにしましょう。どうもありがとうございました。
藤森 ありがとうございました。