アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
最後に三つ、現在工事中のプロジェクトをご紹介します。東京で「機械情報産業記念館」という、ハイテックのパビリオンを中心にした複合ビルを青山のSPIRALに近いところにやっています。イメージのもとにあったのは、リートフェルトのシュレーダー邸とコルビュジエのチューリッヒの記念館です。
最初のイメージのドローイングでは、40メートルの四角い箱で、その中に多機能が入っていまして、展示のスペース、玄関のホワイエ、二階へ行きますとインフォメーションセンターとか貸展示場、四階が会議場という構成ですが、これもわりと忠実に幾何学的な抽象的な、しかも近代の建築の持っていたボキャブラリーをどう考えたらいいかということを前提に設計を進めてきました。
私たちがいま非常に興味を持っているのは、建物の各部分のエッジです。四角い建物でありながら、空に対してきわめて鋭敏に接するものはないかということで、アルミあるいは軒裏のステンレスの鏡面仕上げによって、反射性のあるエッジをつくろうとしております。
さらに、現在はいろいろな部分の模型を現場でつくっています。また、新しい感性を持った被膜をつくろうということで、穴あきアルミ板とガラスを合成したパネルを使ったり、サッシュレスの表皮を考えています。わりあいと予算のある建物なので、いろいろなことを考えてやっています。
次は「幕張メッセ」です。去年の指名コンペで入賞した建物で、現在、施工中です。520メートルの長さを一挙に印象として見せられる形態は何かということで、こういうかたちになっています。比喩的にいえば向こうが丘で、手前に集落があるという、そういう形態構成を持っています。
1989年秋にはモーターショーとかも開催される予定で、関東圏の大きな展示場になるということで、工期も20ヵ月しかないために、かなり工場生産品のアッセンブリーを多用した建築になると思います。構造、設備、建築合わせて1900枚の図面を一年問でかきました。それを20ヵ月で工事するのですから大変です。
200分の一の室内模型です。全部スペースフレームでできています。幅60メートル、奥行120メートルのものが8つついているわけです。
最後が「東京都体育館」です。これも現在施工中で、あと二年かかりますが、いま千駄ケ谷駅前で大きな穴を掘っています。こちらは杭が1800本で、さっきの幕張メッセは3500本あります。藤沢の体育館と同じ、屋根は全面ステンレスになっていくと思います。
ここで一つ試みようとしていることがあります。インドのデリーに古い天文台の遣跡がそのまま町の真ん中に残っているんですね。異種の形態のぶつかりあいがつくるランドスケープが非常に面白いものです。さまざまな形態のぶつかり合いを東京の真ん中に展開したいと思っています。今回は室内競技場は正円なんですが、その横にジグラードのような小体育館があります。そしてプールがあって、トレーニングセンターなどがあります。競技場の直径は一二六メートルです。藤沢は70メートルですから、かなりの大きさの建物なわけです。
ここは公園地区なのであまり高い建物ができないということで、むしろ掘り込みました。地下6、7メートルのところが競技フロアで、固定席全8000人、そのほか数千人、含わせて一万人ぐらいが入れる、イベントホール的な様相も兼ねています。
競技場を取り巻いて動きのある回遊性の道をつくろうということで、いまここにいろいろなしかけを考えています。上がってくるといろいろな風景が見えてくるような、そういう都市のアーバンデザインをもくろんでいるわけです。
大アリーナの屋根は、2枚の木の葉が寄り合ったようなかたちになっています。ここでは、藤沢方式とは異なる別の形態で、直径も一二六メートルですから、違った条件が入ってきます。これはまたイベントホールとしても使うため空調するので、表層は藤沢のような鉄骨がむき出しになるのではなくて、もう少しスムーズな面を持ってくると思います。ただ、それはそれなりにひとつの解決だと思いますが、あえて複雑な形態をやっているのは、さきほどいいましたような異種の形態のぶつかりあい、材質のぶつかりあいがつくり出す空間をつくりたいという、一貫したもくろみからくるわけです。
現在、50分の一の模型によって内部をチェックしながら細部のデザインを進めています。いちばん力が複雑に集まってくるような部分の鉄骨のディテールは、図面だけではとてもわからないものですから、模型をひとつずつつくって、工事業者やメーカーと相談しながらやっています。われわれのところでは、大体大きな現場では設計担当者がそのまま全部現場へ行ってしまいますので、幕張が始まって、事務所の中は半分ぐらい現場に出て閑散とした状態です。
今度、藤沢に新しく慶応義塾のキャンパスができます。その全体計画をやっています。先日、敷地へ行ったときに、向こうにちょうど藤沢の体育館が、昼間の三日月の残像のように見えていました。ある浮遊性のあるかたちといいますか、そういうものが一筆画のように見えたので、記念に写真をとりました。やはり建築家というのはどこかであるイメージを先に設定して、それをいかにして現実のものにしていくか。その過程において設計という行為、それから監理という行為があり、そこにもちろんさまざまな人々が関与するわけですが、一方においては形態、寸法、物質、およぴ物質系ということが、いつまでたってもひとつの共通の課題としてあるわけで、そういうものを一つ一つ試してまた何かつくろう、そういうことではないかと思います。