アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
まず最初のスライドは、福岡市内から少し離れた場所に建つ「Sタウンセンター」で、今設計中の建物のスケッチです。初期のスケッチなので現段階はもう少し変わってきています。
この建物のデザインは、いろいろな要素をそれぞれのプログラムに応じてレイアウトしています。ある意味でいえば、構成的、構築的です。レム・クールハースのいう「クリティカル・マッス」臨界質量ですが、そのやり方に近いところもあります。つまり、考えられる最大限のボリュームを設定して、そこから空間を抜き去っていく、マイナスの部分、ヴォイドの部分をつくっていく、というやり方をクールハースはしていますが、ややそれに近いかもしれません。まず大きなヴォリュームを敷地に設定して、そこから空間を抜き去ることによって建築に変質させていこう、という手法です。
ドイツの建築家フライ・オットーの計画案に「ミサイルの格納庫」というのがあります。高さが100メートルぐらいあるものです。実現はしていない計画です。
コンスタンチン・ブランクーシの彫刻作品「フィッシュ」です。1920年頃のものですから、今から70年も前の作品です。最近、伊東豊雄さんが風の変容態ということで、これに似たような形を表現していますが、ブランクーシは、概念を表現する彫刻家としては、20世紀の彫刻家の中で世界の五指に入るだろうと思います。伊東豊雄さんは勉強家ですから、いろいろ調べられて、ブランクーシが気に入られたんだろうと思います。
「フィッシュ」ということですから、魚の形に似ていると感じる人もいるでしょうけれど、ブランクーシにとっては、水の中を移動するという概念、移動するという現象そのものを形に表現しているのであって、魚の形に似せているというわけではありません。真鍮性です。
さきほどの福岡のプロジェクトを進めるプロセスの中で、フライ。オッターの考え方やブランクーシの考え方を参考にしてデザインが変わっていくわけです。
次もやはり、僕の計画に影響を与えたものの一つですが、アースワークというか、彫刻家クリストの作品に「空気の形」というのがあります。クリストは「アンブレラ」という、僕も見にいきましたが、茨城県とカリフォルニアで同時期に巨大な傘をいくつも広げるという作品で有名な人です。「空気の形」は高さが焼く85メートルほどあり、単純にいうと中に空気が入った風船です。つまりクリストは、空気あるいは大気というもののテリトリーをはっきりさせて、それを包み込み、形がないと思われている空気に形を与えたわけです。これは、巨大なミミズのような形でなくても、丸いものでも、四角いものでも、どんな形にもなるわけですが、クリストが与えた形はこうだったわけです。一種のコンセプチュアル・アートですが、ものすごく巨大なものです。
クリストは巨大なものをやるのが得意な人ですが、彼がスケールの大きなものにこだわるのは、社会的な影響力を考えてのことだと思います。つまり、「空気の形」という作品はドイツのカッセル・ドクメンタという美術展で展示された作品ですが、多分一週間か二週間展示されて、その後取り壊された。つまり、一、二週間すると消えてしまう、ということがクリストにとっては大事で、空気の形がある時期出現していた、ということをそれを見た人々の記憶に鮮烈に留めよう、というのがクリストのねらいだったわけです。空気に対する認識、見た人になんらかの影響を与える、それが現代美術の一つの大きな役割でもあると思います。
話題が逸れているように思われるでしょうが、そうではなくて、僕は福岡のプロジェクトをやりながら、建築をクリストがやったような考え方からとらえていけないだろうか、と考えていたわけです。