アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
秋田県の十和田湖の近くにあります「小坂町立十和田小中学校」です。全校生徒数十二人です。この学校から全日本のノルディックチャンピオンを五人も輩出しています。午後は先生も生徒もスキーで走り回っています。少人数ですから、細かいところまで教育が行き届いています。最近登校拒否やいじめ、受験というニュースばかり聞かされているだけに、この学校からたいへん暖かなものを感じました。教育は総合的に小規模できめ細かく考えることが大事だと思います。
設計当初から木造でお願いしたいと強く望んでいました。生徒たちは学校で教わらなくても、秋田スギに囲まれ十和田湖で九年間過ごせば、みんな立派な秋田県人になり、小坂町の人間にばるだろうという誇りがあります。もうひとつの要望は、十和田湖が見えるように壁をなくしてほしいということでした。私は日本で一番雪の深い地域であることも考慮に入れ、秋田スギの尺角でつくりました。
自分もときどきこの学校に行きますが、廊下をひとめぐりすると、血圧が下がっていくような感じがします。東京のストレスによって上がっていた血圧がここを歩いただけで、すーっと体の中が静かになっていくような自然治癒力が大型木造の建物にあるように思います。
四月に開校したのですが、九ヵ月間に見学に訪れ署名してくださった方だけでも一千五百人に及びました。みなさんがこういうものを望んでいるのです。コンクリートの学校を建てれば多くの補助が出ますが、むしろ木造に補助を多く出してもらうぐらいでよいのではと思います。
中庭には湧水施設があります。冬でも子供たちが遊べるようになっています。サロンは先生や生徒だけでなく、おじいさんやおばあさんも囲炉裏を囲んでくつろぐことができます。夜になり電気が灯ると、木造の建物は暖炉の火を見ているような暖かさがあります。
「直島町立総合福祉センター」です。反射ガラスを使用してます。木造にカーテンウォールを直付けすることで、コンクリートに置き換えられる木造建築を考えました。
名前は「福祉センター」なのですが、実際は生涯学習塾です。直島はこの建物ができましたので保育園、幼児学園から大人まで一貫教育をするという夢を達成しました。町長の三宅親連さんは八十六歳です。全国で最高齢の首長です。みんなでここで寄り合っていくような直島の精神を失わない施設をつくりたいという気持ちを建築に反映させて、大型の木造をつくりました。私は直島から二十六年間で八つ仕事をいただきました。今のように談合問題で究明されている政治家もおりますが、町長は金にほんとうに潔癖な人でした。町長が体を張って自分の考えを通すという姿勢の後に、私がくっついていきました。
カーテンウォールや屋根と木の間は、木が収縮する習性を考慮してダンパーを付けました。屋根にもそのような調節が効く部材が入れてあります。反射ガラスを使い、ガラス面に空が映ったり木が映ったりすることで建物の見え方が変わります。逆に夜になると、内部の木造が見えます。反射ガラスの良さはカーテンや障子紙がいらないことです。フレームだけの障子がはまっています。直接日光は入りません。そして障子紙が外を見るのを邪魔することもありません。
純正大型木造は耐振性にもすぐれています。コンクリートが四十年ほどしかもたない今日、純正大型木造にカーテンウォール取り付け方式が、この国の公共建築の基本形になってくれないかと考えています。雨や風に当たらない木造が何百年も持つことを来たいしています。実際、法隆寺は雨や風邪にさらされても一三〇〇年も持ったのですから。