アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「都市へのプロトコル」の主題に成った建築です。池袋の芸術劇場の前にあります。若者が集まることで最近よくテレビなどに出てくる西口広場に面しています。この建物の中身は税務署で、地下にはコンピューター・センターが入っています。ほとんど公共的なプログラムにないものです。
実は都市の中のほとんどの建築は公共性をもっていません。建築家は都市の中の公共性を主張しますが、そのようなプログラムをもってないことが多い。先日MOMAのパオラ・アントネッリさんが、香港の「中国銀行本社」を例に出して公共性について講演されました。中国銀行の中に入っていけるかというと、一般の人は入っていけないというわけです。まったく公共性をもたないのです。
ここは商業地区で、池袋駅西口の広場に建つのですが、それ自身はまったく公共性がないプログラムになってるわけです。
私がここで考えたのは、ある広場、例えば都市の広場に対して塔が建つことによって、何かをシンボライズするわけです。つまり外部の空間を生み出す方法論があるということです。日本では鳥居がありましたし、ヨーロッパの広場に塔があります。塔自身には機能はありませんが、外部の機能として塔が存在するという方法論はあるわけです。そういった方法論で、塔が存在するような建築を考えました。
もう一つ厄介なことに、税務署のような公共機関は午後五時に終わってしまいますが、この街は五時以降が大切な街であることです。そういう街に対して公共性をもった建築—公共性はないのですが—公共が建てた建築物がどのような貢献をすべきかと、ここでは塔をライトアップすることを主張して実現しました。 塔の内部はコアになっています。四角い平面にコアが二つ突き出ているだけの簡単な平面になっています。非常にレンタブル比の高い空間です。
さらに私が考えなければならない問題がありました。設計が私に決まった際に、東京都主税局長に挨拶にいったところ、冗談でなく「税金の取りやすい税務署にしてくれ」と、いわれました。これはたいへん難しい問題であると思いました。
税金が取りやすい、ということをもう少しよく考えてみると、公共サービスが存在することではないかと思いました。
コアを考えたきっかけになった背景には新宿に移った東京都庁舎での体験があります。打ち合わせにいったときのことです。十八階にある営繕部に九時にいくことになっていた私は、八時四十五分ぐらいに都庁舎に着きました。ところが約束の時間に間に合わなかったのです。登庁してくる職員が高層エレベータに群がっていて、私は上がれませんでした。これがサービスを主体としたプライベートなカンパニーであれば、ゲストを優先に乗せるなり、社員以外のゲスト専用エレベータを設けるはずです。そこで、税務署にもそういったプログラムが存在するのではないかと、登庁してくる職員ではなくサービス用のコア、いわゆる税金を納めにくるゲストが使うコアを別に設けようと提案しました。そのように分かれている庁舎は前例がありません。これはけっこう画期的なことですが、説得するのはたいへんでした。しかし、銀行のようにカウンターの向こうとこっちで対応するかたちの業務であったので、普通の庁舎よりは素直に受け入れられました。