アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
役所が設計を発注する体系は、現存八割が入札によるものです。滋賀県立大学は、内井昭蔵さんが、「マスター・アーキテクト」という制度を利用してつくりました。私がここで問いたいのは、民主主義は都市景観をきちんとつくっているかという問題です。これまでの都市景観は民主主義がつくっていないものなんです。エジプトのピラミッド、パリ、ローマ、京都は民主主義によってできた都市景観とはいえません。国会議事堂でもそのように見えますが、現在の価格に直すと坪五百万以上するような建物をつくることを決議すると、とんでもないことが起こると思います。
しかし、民主主義の体制でとし景観をどうつくっていけばよいかという問題は厳然としてあるわけです、これに応えていかなければなりません。私はこの「マスター・アーキテクト」のような制度が、民主主義を保証するもおのとしてどんどん導入されなければならないと思います。熊本のアートポリスや、岡山のクリエイティブ・タウンなど、いろいろなところでそういった運動は起きていますが、これからはデザインを基点として都市景観を構成する方法論を取っていかなければ、民主主義は何の都市景観もつくらなかったということになるでしょう。
最近、吉村順三先生の建築を見て、それについて文章を書く機会がありました。そこで、思いましたのは、吉村先生の作品は非常に愛されているということです。要するにデザインのいいきちんとした建築は、民衆に愛される可能性がある。クライアントに愛される。それによって、景観をつくりながら都市の中に存在して残っていく可能性があります。フランク・ロイド・ライトの作品、ル・コルビュジェの作品のように、愛されることによって残っていく建築があるわけです。
入札という方法論ではなく、デザインを基点にした都市景観の構成をこれから考えていかなければなりません。今ここに、自治体の建築関係の方が何人かおられるかもしれません。口では自分たちの町のよくする、とみなさんおっしゃいますが、現実を見据えてどう自分たちの町をよくするか、よい景観をつくっていくかという問題に対して応えていく時期だと思います。
京都で進めているプロジェクトです。京都の景観を守るために地上を二階建てにして、地下をさらに2階分掘っています。「ファン・ハウス」と同じ方法論で、美術館をつくることにしています。
間もなく工事が始まる、渋谷の超高層ビルのプロジェクトです。面白い構造をしています。竹の枕と同じです。主体構造が外側にあり、真ん中には柱が一本もありません。すべてFR鋼という素材を使っています。この一本一本の断面は三十五センチ×七十センチです。非常に細い断面のもので、全体で何万トンもあるオフィスビルを支えます。こういうことができるのは、日本は垂直な加重よりも耐震構造のほうが上回っていますから、全体をブレース構造にすることによって、細い断面の柱で全体を支えることができるというわけです。
東京建築賞を受賞した三浦半島の逗子にある茶室です。海の近くに建っています。昔でいうと、庭が茶室の回りに存在するんですが、海からの風が強いので、全体をシェルターで囲む構造を考えました。ここでも、自然とのつながりを考え、非常に風の強いときは、内露地の外側のガラススクリーンを閉じることによって内露地の空間が内部化されます。天気のいい日には、開けて外部に解放することによって、自然な空間のつながりを出そうと考えたものです。
以上でスライドは終わりです。残りの時間、コンピュータに切り替えて、もののつくり方を説明しようと思います。
(会場のスクリーンに大江氏が持参されたパソコンの画面が映し出される)