アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
小さな指名コンペから始まった仕事ですが、同じクライアントでパチンコ店を三つつくっています。その最初の建物です。
地方都市の商店街に敷地が面しています。クライアントは、もともとここでパチンコ店を経営していました。その敷地に隣接していた三軒ほどの店が、駅前の再開発地区のほうに移ってしまったことから、その土地を買って、裏通りと表通りをつなぐようなかたちの敷地が出来上がり、それを機会に少しターゲットを増やしたい、ということでコンペがあり、私たちが選ばれて仕事をさせていただくようになりました。
三本の前面通りをもつ変わったかたちの敷地ですが、このかたちを建物が建ち上がったあとにも残したい、このかたちをそのままワンルームで立ち上げたいと思いました。「再春館製薬女子寮」では、ワンルーム中を好きなように歩ける、好きなように使えるという考え方でしたが、ここでは、「歩くところ」として設計段階で、もう少しかたちで示せないかと思いました。
プランニングの最初に、人が入ってくる道を決めました。ゲームをするホールに向かって、各道から入ってきます。残りの部分に小部屋ができますので、それを、機械室やオフィスやトイレとして割り当てました。ホールは吹き抜けのワンルームです。ホールのレベルから半階さがったところにまわりの小部屋があり、半階上がるとその上が休憩スペースになっています。三面道路が、それぞれ傾いていて高さが違うものですからスロープが高さを調整するための道として入り込んでいます。コンペの条件として、パチンコ店のほかにもう一つ三百平米ほどの貸室を設けることがありましたが、たまたまそれが、このパチンコのホールとほぼ同じ面積だったので、真上に貸室をのっけました。パチンコ店とは全然関係ないので、裏通りからと表通りから、それぞれ階段で上がれるようになっています。
外にはハーフミラーを使っています。昼間は周りの商店や空を映していますが、夜になると逆に中が見えてきます。貸室のヴォリューム全体に「金馬車」という店の名前をシルクで刷り、それが看板の役目を果たします。
基本的にはパチンコの台は私たちの計画範囲外のものでしたが、二階の休憩室の床とパチンコ台の高さをそろえてもらい、手前の休憩スペースから裏の休憩スペースまで白い床が連続するように試みました。台は平行に並ぶので、それもなるたけデザインに使っていこうとしました。材料は、一階はクライアントの希望で、木で仕上げていますが、それ以外のところは全部アクリルミラーで仕上げました。パチンコ店ではミラーを使うのは一般的ですが、ミラーだとすごくハードだし、少し暗くなる気がして、かといって、白い壁だけのホテルのラウンジやカフェバーのように、ただ品がいいだけのものをつくりたくなかったので、どこかでゲームセンターの猥雑さのようなものを出したいということで、アクリミラーを使用しました。ミラーより柔らかく像が歪むその素材を、装飾の代わりになればと考えて、徹底的に使っています。
ミラーに人や階段が映り込んで虚像となり、どれが本当の階段かわからなくなります。人が動くことによって視点が変わるので、壁や天井に映る模様がどんどん変わっていきます。そんなところが、パチンコ店らしい装飾や派手さにつながるようにしています。
非常に図式的なものがそのままただの図として立ち上がるのではなく、プランを単純化しても、それがいろんな違ったものとして立ち上がってきたらいいなと考えています。
「パチンコパーラー I」よりほんの、二、三カ月あとに出来上がりました。既存の店舗に休憩スペース兼エントランスホールをつくり、改装してイメージチェンジしたいとの要望でした。既存店舗がもつ前面道路からの後退分の余白に、前面道路と平行してエントランスホール兼休憩スペースをつくりました。これは郊外店で、ガラスのボックスをつくろうとしました。
既存店舗側に四本の柱をたて、そこからキャンティレバーで庇のようなものを出し、植えのほうは、照明ボックスを等ピッチに配置し、そこからライティングするようになっています。既存店舗側の一メートルの壁を使って、テレフォンボックスや景品の棚、洗面カウンターなどを埋め込んでいます。中間の高さのところにはダクトが通っていて空調をしています。
ロゴを使うことは決まっていたんですが、今度はガラス面だけでつくれるものですから、ガラスとロゴとが一体の材料として見せたいと考えました。キャンティレバーで約四メートル出しましたので、ガラスリブで壁面をつくっていけばいいわけですが、できるだけ細かくリブをたて、どっちがフェイスガラスで、どっちがリブガラスというような—構造と表面という整理がはっきりしないような—ガラスのルーバーに文字が入っているものをつくりたいと思っていました。現在は、中に籐椅子などおかれて、休憩スペースになっています。床を白っぽくしたので、ガラスにあるKINNBASYAの文字が影となって映ります。夜になると、均等に埋まっているライトがプログラムされていて、ロゴをいろんなパターンで映し出す。