アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
最近出来上がった建物です。岐阜県のマルチメディアに関係する学校の付属施設です。校庭に新しいスタジオ兼ギャラリーとなる建物をつくりたいということで、この計画が始まりました。
ほとんどこのスペースで天井高が五メートルほど必要で、私たちは、広々している校庭に、突然五メートルの高さの建物をおくことに抵抗がありました。また、スタジオ兼ギャラリー、アトリエ、工作室、サロンをどのようにするかについて、建設委員会の人たちと話し合う場で、制作、展示、ワークショップ、イベントができるワンルームにして倉庫のようにしたらどうかとの提案もありました。人によって考え方が違い、広いスペースを取りたいという人もいれば、暗くて狭いところでないとだめという人もいました。最終的にはワンルーム案から、それぞれの部屋の役割に必要な平米数を取っていく案に落ち着きました。
マルチメディア工房 五メートルの高さのものをドンと建てるのではなく、校庭と関わりのあるものにしたいと思い、一・七メートルほど掘って建てました。天井高のいらない部屋を前にもってくることにより、ゆるやかな局面で屋根を校庭につないでいます。この広場は、エントランス広場でもあり、イベントができる場所でもあり、アーティストによっては屋外の展示場にもなります。エキスパンドメタルのタワーがあり、夜はさまざまな映像がここに投影されます。
エントランスでもある広場には、二つの階段がついています。降りていくと、それぞれ、一階の回廊に出ます。その回廊から、どの部屋にでもいけるようになっています。回廊を歩きながらどこかの扉を開けると、どこかのゾーンに出るようになっています。
一階の回廊を歩いている人は、上を見れば景色や空が目に入ってきます。校庭にいる人は、一階にいる人は見えません。建具が五メートルあるので、ガラスの向こうに、扉が開け閉めされている状態だけを外から見ることになります。
和歌山県の中辺路町の小さな美術館です。川べりにあります。山に囲まれているので、視線をある程度上げるときれいな自然が見えますが、敷地の周りは、古くなったプレハブなどがあり、都市の喧騒を感じることはありませんが、かといって自然が満ちているというわけでもない、そういうところです。現在も試行錯誤しながら進めています。この場だけのランドスケープを突然つくり上げても、そこから先が白々しくなるような気がします。
最初は、シンプルな箱をただおく案だったのですが、町の方と話を進めているうちに、必要なスペースをそのまま建ち上げる方法となりました。展示室、オフィス、収蔵庫、機械室、トイレがあります。小さいけれども、場所によって見え方が違う建物を考えました。
プローチする人は、最初にこの建物を上から見下ろすことになります。そのときのイメージと違った体験ができたらいいなと思っています。壁沿いに歩くと、本当の建物の倍の長さが立面として立ち上がっていて、歩いているうちにどこがどうだか、よくわからなくなるような建物を考えています。
小さな美術館なので、どこからでも出入りできるものにしたい。そこで、回廊をうまく使うようにしています。
都市でもなく田舎でもなくあいまいなところで、建築がどうおかれたらいいかと、素行錯誤しています。市街地の場合は、基本的には土地の広さが限定されていますので、わりと私の建築の輪郭線は、敷地とほとんど相似形あるいは、平行線で決められていて、積極的なかたちがなくても、自動的に決まってくるようなつくり方をしていました。「森の別荘」は、逆に輪郭線をまったく気にしなくてよいくらい周りが単調な森でしたから(私の勝手な解釈ですけれども)、何となくつくりやすかったのですが、最近つくっている建物は、自然があるようでいて、また違う要素も入り込んでいる環境の中にあり、そういう場合に建築をどのように建てたらいいのだろうかと考えています。新しいものがおかれるわけですから、すぐさま環境とぴったり合うのは不可能ではないかと思います。時間とともにだんだん周りと関係をもてるようなものをつくれたらと考えています。少しずつ、つくりながらその先の問題について整理していこうと思っています。