アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
先ほどのような住宅になにが欠けているかというと、ケア施設です。今はご夫婦ともに若いので問題はありませんが、年をとられたときに、どこかで彼らに対するケアが必要になってきます。あれが例えば集合住宅の一ユニットだとすると、そこになんらかのケアができるような施設がないと、住宅はもはや成り立たなくなっているのではないかと思います。現にわれわれは、コンビニエンスストア、託児所、幼椎園、老人のための施設などがあることを前提に今の生活が成り立っています。つまり、住宅を完結した単位であると思っていることの方がおかしいことになります。家族は完結している一つの単位だと今まで思い込んでいたのですが、家族が完結した単位にもうなっていないと思うんです。外側からのさまざまなサポートがないと、もはや家族は成り立っていかない。そこでそのときに何が必要かというと、さまざまな家族をサポートするための機能がますます必要になっていくはずです。
ここは岡山にある、アルツハイマーの老人を昼の間預かる民間の施設です。朝の八時半ぐらいから夕方の六時ぐらいまで老人を預かり、精神科の先生が面倒を見ます。アルツハイマーの人たちは、徘徊したりするものですから、家族の人たちが持て余して、ある部屋に閉じこめてしまったりして、それによってますます病状が悪化していくことがあるそうです。院長先生がいうには、この施設に毎日通うだけで症状が良くなるそうです。社会から隔離されていることが最も病状に悪いらしく、この施設に通うことによって社会に参加しているという意識を患者さんが持てるそうです。先ほど、施設は隔離施設だといいましたが、これもそういう意味ではアルツハイマーの人たちだけを収容する隔離施設であるわけです。
では、その隔離施設をどうつくるかと非常に迷いました。アルツハイマーの施設は、家族が患者を見られるのをいやがるので、閉じた施設になりがちですが、もし外側に豊かな地域社会のようなものがあるのなら、こういう人たちが外から見えることは、何の差し障りもないと思うんです。なぜ外から見えると困るかというと、この施設の外側が、この施設となんの関わりもないからだと思うんです。外を歩く人たちは、この施設となんの関わりもない人なので、むしろ切断したほうがよいと考えてしまうのだと思います。
外壁ですが、小さな穴を開けた杉板がルーバー状になっています。こうしますと、中から外がかなりよく見えます。開口率が大体30パーセントぐらいで、かなり日が入ってきます。
外部とどういう関わりを持つかが今、非常に重要なことだと思うんです。外部はその施設とまったく関わりがないのか、それともその施設となんらかの関わりがあるのか。それによって、隔てるもののつくられ方が変わっていくと思います。場合によっては、建物をつくるにあたって、外部はこうあってほしいと発言する義務もわれわれにはあると思うんです。この場合はその外まで民間の施設を変えるわけにはいかないので、ぎりぎりの選択をしたと自分では思っています。
老人を預かる施設と、コミュニティーセンターです。横浜市は現在そういう施設を六十から八十つくろうとしていますが、そのうちの一つです。コミュニティー施設は市民局の担当で、老人用の施設は福祉局の担当です。ですから、従来までは無関係の施設としてつくられてきたわけです。たまたまいっしょにつくることがあっても、相互に関係のない別の建物として扱われてきました。この建物は、両者を一体のものとしてつくれないかという提案をして、それが実現した例です。大きなホールが前にあり、そのホールの石側が地区センターで、左がデイケアセンターです。
中庭を挟んで左側が地区センターで、右側がデイケアセンターです。インテリア化された中庭をつくりたかったのですが、これについてはうまくいきませんでした。横浜市の場合、敷地の20パーセントを緑化しなければならず、緑生局の予算でつくります。それで、中庭は緑生局の人がデザインすることになり、私たちの建築とうまく関係していない庭ができてしまいました。ただ、従来までの地区センターとデイケアセンターに比べて、はるかに両者が融合しているという意味では成功しているんじやないかと思います。