アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
広島の平和大通りに面した立地のよいところにつくられる消防署です。消防署はエマージェンシー、つまり緊急のときに出動するのは当然ですが、多くの場合防災について日常的にメッセージを伝達していく中心であって、多くの時間は防災に対する教育施設として使われます。私は消防署の前を通って毎日事務所に通っているんですが、しょっちゆう訓練しているところを目にします。その風景がずっと頭の中に残っていて、訓練する施設を中に組み込んだ消防署にしようと思いつきました。
大きなアトリウムがあって、その中に訓練施設が入っています。トラックも入っています。そういうものを全部組み込んで、それを見せるためのショールームのような消防署というのがコンペの趣旨です。たぶん日本の消防署でこういう訓練施設を組み込んだのは初めての例じやないかと思います。
すべて透明な建築なので、赤い箱を中に宙づりにして、透明にならないものをこの箱の中に閉じこめています。回りはガラスのルーバーを付けようと思っています。どんなルーバーになるかについては現在思考中です。日照をどうコントロールするかについて実験中です。
一般の人たちが入れる階があって、そこからロープを渡るなどの訓練風景が見えます。全体が透明な床になっていて、消防自動車が上からも見えるようになっています。
新しいプロジェクトで、基本設計がほぼ終わった状態です。函館の情報系の大学です。複雑系と情報アーキテクチャーという二つの学科を持った日本で初めての大学です。コンぺの際、情報アーキテクチャーという学科と複雑系をどういうかたちで提案するかについて、初めての体験だったので迷いました。情報アーキテクチャーとは建築学科のようなもので、建築学科は具体的な建築しかつくりませんが、情報アーキテクチャーは、それにバーチャルな建築も含めて情報空間をつくっていこうという学科です。ですから、建築学科だったらどういった空間構成にしたらいいかというところから考えていきました。
全体が敷地に合わせて階段状になっています。高さが3.5メートルずつ上がっています。上がったところにスタジオ(教室)があります。先生たちの研究室の回りがスタジオになっています。全体がスタジオ兼先生たちの研究室で、ちょうど函館山が見える非常に景観の優れた場所です。
研究室と学生たちのスタジオが、お互いに相互浸透できる感じで進めていくことを考えています。
最近の一連の作品を見ていただいたわけですが、前段でお話しした、社会とどう関わるかという話と必ずしも整合していないので心苦しいところもあります。ただ、現在の閉じた施設のさまざまな関係をもう少し開いていけたら、という気分だけは持っていたいと思います。たぶん心ある多くの建築家たちは同じようなことをきっと思っていることと思います。そして、開いていくためには、ただむやみやたらに開いていけばいいわけではなく、どこにどう開いていったらいいかが問われていると思うし、その開き方が一種の建築をつくるときの思想ではないかと思います。ですから今、お見せした例が必ずしも前段でお話しした私の建築の適切な例だというつもりはありません。とりあえず一例だというふうに思っていただけたらと思います。たぶんみなさんはもっと優れた例をこれからつくられるだろうと思います。こうしたいと思っても手前のところで止まってしまう場合もあれば、自分がしたいと思っているかなり先までたどり着ける場合もあるし、それはプロジェクトによってさまざまだと思います。ただ、その方向だけは間違えないようにしたい。後戻りはしないほうがいいと感じます。モノをつくっていくことは、先に向かって投てきするようなもので、それが非常に手前にぼとっと落ちてしまうこともあるし、かなり遠くまで投げられることもあります。ただ、その方向だけは間違えないで投げたいと思っています。見ていただいた作品は非常に中途半端な例だとは思いますけれども、投げる方向だけはきつと間違つていないと自分では思つています。