アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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妹島 和世 - 自作について
密度感でとらえる集合住宅
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東西アスファルト事業協同組合講演会

自作について

妹島 和世KAZUYO SEJIMA


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密度感でとらえる集合住宅

集合住宅は、一つのことからいろんなことが全部決まることはありません。いろんな条件が錯綜しています。いろんなことが重なった上で出来上がっています。集合住宅といっただけで住宅が積み重なって非常に大きなボリュームをつくることがもともと前提とされるし、だれも疑わないでいいことになっています。それからもう一つ、当然要求条件というか前提として3DKで何平米といったものが何戸で、4DKで何平米の住戸が何戸、2DKで何平米が何戸というものがあります。いろんな場所で集合住宅を見てみると、どういう場所に行っても、ああこれは集合住宅だな、とわかるようなボリュームが存在しています。多少敷地に沿ってアールになっているとか、材料が違うとか、いろんなデザインがあるとしても、あれは集合住宅だなというのが、極端にいえば世界中、郊外に行けば共通したことになっていると感じます。それで、その内部の、要するに何DKがいくつあってということがまずもとになって、それが何十戸、あるいは何百戸組み立てられるものが集合住宅であるということをもう少し考えられないかと思いました。つまりあまりにも内部のルールが前提になっているから、どういう場所に建ってもなかなか集合住宅自体のボリューム、要するに回りの環境というが風景というか、そのコンテクストの中でのあり方はなかなか変わらないし、その中での生活もそんなに変わらないんじやないかと思いました。もう少し外側との関係から集合住宅が決まってくる方法があるはずです。外側との関係が変わって、同時に内部の生活も変わるというものを考えてみたいと思いました。外側、いわゆる環境というものをどのように捉えるかということが次の間題でした。

もっと全然違う切り方はいくらでもあると思うんですが、私たちがとったのは、日本で集合住宅が建ちそうな場所を選んで、それをどういうふうにとらえるかというときに、密度感みたいなものでとらえようとしました。基本的に住宅地図を使って建物があるところを全部黒く塗吐りつぶす作業を延々としてみました。ほかの情報はすべて消してしまいました。

その結果、三つのタイプに分けることができると考えました。一つ目は住宅地です。塗りつぶされるものの大きさがほとんど均質で、空いてるところは道か庭だろうと判断がつきます。方位もわかります。

それに対して二つ目はウォーターフロントなどの新しい開発地域で、同じスケールの住宅地図を塗りつぶしていっても向きや方位、道や広場などがほとんど想像がつかないような場所になっています。塗られてくる黒いボリュームも大きなものになっています。その二つの中間のものが三つ目で、例えば建物と方位はわかりにくいけれど、なんとなく道とか公園になってるなどが読みとれる場所です。

このようにして、「密度のランドスケープ」ということばを使ってまとめました。結局、こういう三つの場所に集合住宅が建ち得るときに、そういうボリューム感というか密度感みたいなものとの関係で集合住宅のボリュームを考えられないかと、私たちなりの環境との関係ということで定義してまとめました。そこで、五つのタイプを想定しました。

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