アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
先ほどの住宅地のように、小さいものが建ち並んでいる場所において、集合住宅のボリュームを小さなものにどんどん分けていけないかということで、例えば束京の世田谷などの住宅地の中に一ヘクタールの土地があったときに、賃賃の集合住宅、公共で大体私たちなりに一へクタールに七十平米の住戸が百二、三十軒入る延べ床を想定してつくったものです。二階建てで、建ぺい率が六十パーセントで可能です。一方では十階建ても考えました。その中間として四階がエレベータのない自分の足でアプローチすることが可能な限界であろうと考え、基本的には各住戸まで自分の足でGL面から階段でそれぞれアプローチしていけるタイプのものを考えました。それより高層になった場合はどうしてもエレベータが必要になってくるので、廊下経由のタイプになるわけです。
このような考え方をすることによって生活が変わるんではないでしょうか。これらは結局二階建てと四階建てと十階建てですが、延べ床面積は基本的にすべて同じです。
これは想定した一ヘクタールのプロポーションですが、各戸に四時間日照がとれるかということをチェックした上で、小道を取ったりしてます。二層がグリッド状に切れていて、好きなように各家を取っていくというかたちです。この場合、中庭と屋上にそれぞれの家が庭をもっているかたちにしています。
次は四階建てです。土地のプロポーションを決めればある程度日影などから自動的にかたちが決まってきます。ある長さが取れたら延べ床が決まってますので階数で割って、自動的に奥行きのあるボリュームが決まります。細いプライベートなベッドルームのユニットとLDKのユニットを客戸が二つもっています。それをランダムに組み合わせていきます。他人の吹き抜けの上を自分の階段が飛んで、斜めのボリュームニつが一住戸、もしくは横に並ぶとか上に重ねるなどして一住戸がつくられていきます。
それに対して同じ四階建てでも閉じてもいいというふうにすると、さらに長くなって、その代わりに中庭と外側という関係が生まれてくるのでニタイプをつくりました。その場合は長くなる分だけ奥行きが薄くなるので、両側に均等に開けられるようなタイプを考えました。
十階は、実際に岐阜でつくったものなんですけれども、それだけ大きなボリュームになるのであればちょっと穴の開いた、立ちはだかるけれども、前後が関係をもっているような薄い板でボリュームをつくれないかということで考えました。
もう一つ十階建てのものを提案しています。
岐阜でのプロジェクトでは、県から地域の人たちにも開放できるような公園のような場所が欲しいという要望がありました。
普通に集合住宅をつくると、洗潅物や布団が干されたりして、外から入ってきた人が居心地よくそこにいることは難しいのではないかと思い、集合住宅のボリューム自体がランドスケープにかかわれるようなものを考えてみました。
普通一万平米を越えるような建物は大きなメインの部屋があり、それを支える小さな部屋で構成されていくことが多いと思いますが、集合住宅では、図面を描いていますと、ニ畳と四畳と六畳、四畳半と六畳など、本当に小さな部屋を延々と描いた結果、知らないうちに非常に大きなボリュームができあがっていく特徴があると思います。そこでここでは、集合住宅ならでこそつくれるようなボリュームがないだろうかと考えました。一住戸が七十平米なんですが、それが十階建ち上がって、公園の真ん中に並んだとき、それが公園のランドスケープに参加できるようにならないだろうかという提案です。
それぞれに採光を取るように決めていったので、側面のかたちが変わって、一住戸のプランがそのまま極端に引き延ばされて建ち上がったオブジェのように見えるわけです。基本的に南から採光は取るんですが、すきまは住戸とその回りに広がるパブリックなスペースとのバッファーゾーンを考えています。
実際に竣工しました「岐阜県営住宅ハイタウン北方南ブロック第一期妹島棟」です。磯崎新さんが全体をコーディネートされ、女性の建築家四人を選び、全員で四百三十戸、一人百七、八軒ずつつくっています。一期工事が終わり、一人五十戸ぐらいずつつくりました。この秋から冬にかけて残りの周辺の五十戸ずつがつくられて、再来年の春に完成します。ですからまだ中庭などはつくられていません。磯崎さんは初めからマスタープランをつくらず、あるときみなで集まってワークショップをしました。要求されたボリュームを取るために、みなで中高層のものがランダムに一周していくように考えてみようということになりました。私が与えられた場所はここだったものですから、その敷地に沿って薄い盤のようなものをつくろうと思いました。
十階建てになると各住戸がどうしても庭から離れた生活になるので、積極的に高所の庭を楽しむ生活ができないかと、百八戸それぞれに、百八個の穴を開け、各住戸が一つずつテラスをもてるようにしました。
プランですが、すべての部屋が採光面に並んでいて、後ろ側は共用廊下でその手前がプライベートな廊下です。要するに前面のサンルームのような場所が部屋をつないで一住戸をつくっています。
断面のダイヤグラムですが、いろんな断面の住戸が廊下によってつながれて、それが組み合わせられて普通の四角形の集合住宅が出来上がっています。
構造模型で見ると、真ん中の部屋のレベルでセクションを切るとグリッドの断面が出てきます。後ろで切ると、共用廊下ですので横線が出てきて、手前の広縁の場所で切ると一つ一つの住戸の断面のかたちが出てきます。
強い主張ではありませんが、集合住宅は賃貸だったので、どういう家族像を想定するかということよりは、いろんな家族がいるし、いろんな共同の住み方があるだろうと思いましたので、初めから一住戸を単位として、その中をプランニングして百八戸つくっていくというよりは、むしろ部屋を単位として、それを緩やかにつなぎながら一住戸としてまとめていこうとしました。そうすると、並んでいる部屋はほとんど同質です。ベッドルームか和室かダイニングキッチンなんですが、それの位置関係が違ってきて、徴妙に生活が異なる住戸が生まれてきます。上に和室と庭だけあって、下がベッドルームとダイニングキッチンのタイプ、逆L字型みたいになっていて下にリビングだけあって上にベッドルームが三つあるタイプ、ただまっすぐ長いタイプなど、同じ部屋なんですけど、徴妙に生活が違ってくるようなことを考えました。
広縁と各部屋がルーバーのようなもので塞がれていて、これを開け閉めしながら調整します。広縁に洗面所が出ていて、その住戸の中を移動している人が前面にスクリーンのように表れてきます。ただ、出来上がってあるときに行ってみたところ、みながカーテンを閉めていて、真っ自なファサードになっていたので、自分としては少しがっかりしました。(笑)
洗濯機置場については賛否両論ですが、室内にないのは不便だという意見は聞いています。確かにそのとおりとも思えますが、何干平米と決まっていたときに、洗潅機置場を外に出して室内に少しでもゆとりを持たせて、洗濯を外でしてみるのもいいんではないかと思います。室内ですべてを完結して、室内を機械でコントロールしようとするような生活ではなく、もう少し暑かったとか寒かったとかいうようなことを具体的に体で感じながら生活していくことも大切だと思います。自分が住むわけではないのでそう勝手なこともいえませんが、快適さという基準が一つになってしまうのは危険だと思います。
タタキのような小さな玄開があります。構造上どの部屋もタタキがつくれるような構造になっています。私が一人で集合住宅に住んだときに思ったのは、一軒家との違いは出入口が一カ所しかないことです。台所の生ゴミを捨てるときも、お客さんを迎えるときも、一つの玄関から出入りするのが気持ち悪いと感じました。もう一つは何かアクシデントが起こったときに逃げ場がないので、恐怖も感じました。しかし、集合住宅にみなが住むようになってきたとき、具体的に社会との関係を持つ場所が一カ所に集中されるのではなく、もう少し多様な関係を持てたほうが自然にコミュニケーションが取れるのではないかと思いました。
最初にコミュニケーションのためのスペースを計画するのではなく自然にみなが出会うようにと思いました。ここではテラスやダイニングキッチンや和室というスペースがあって、それぞれの家族はいっしょに住んでいる人たちの関係によって、隣の人はテラスからやって来るとか、お客さまは和室に通すとか、普通はわいわいダイニングキッチンに入ってくるとか、そういった関係がそれぞれつくり上げられたほうが自然ではないかと思います。
特殊な集合住宅なので、バルコニーから二方向避難が取れません。バルコニーから下に降りると他人の家に入ってしまいます。ここでは消防の方と協議を重ねご、三メートル離れている他人の家に入ってから共用廊下にもう一回出るのであったら二方向目の避難として認めるという緩和措置を応用して取られました。
下がピロティで自転車置場になっています。
先ほど佐々木さんのご説明にあったようにステンレスパネルを「古河総合公園飲食施設」と同じように使っています。区画の壁です。一住戸を区面するときに、上下方向はコンクリートで自動的に区画され、左右方向は、多くの場合は、庭で区画しているんですが、断面が入り組んでいるものですから、水平方向に五十センチの耐火パネルを立てています。それによって、陽の動きやいろんなものが映り込んで、立面上にある住戸の区画パターンがどんどん消えていくようになっています。