アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
ぼくはいろんなことをしていますが、そのほとんどは建築関係の仕事です。今日は、ぼくの建築のデザインについて話したいと思っています。専門は歴史ですが、ぼくのふるさとである長野県の茅野市の市役所からあるとき突然、建築の設計依頼がありました。
茅野市には守矢家というたいへんに古い家があります。出雲からきた勢力と戦い、負けて稲作を習うようになったという話を伝えていますから、日本に大和を中心とした統一政権ができる前から地元にいるようです。守矢家は諏訪神社の神宮になって、縄文時代のようなアヤシゲな儀式をずっと続けてきています。最近でも祭りの日には、鹿の生肉をみんなで食べるくらいのことをしています。守矢家にはそういう資料があって、それが文化財に指定されたので、その歴史資料を展示する史料館をつくりたいということでした。たまたまそのご当主がぼくの幼馴染みということもあって依頼があったのです。
最初は展示の依頼かと思ったくらいですが、断ればぼくが、だれかほかの設計者を紹介しなくてはならないわけです。 伊東豊雄さんと原廣司さんは近くの出身ですが、この非常に生臭くて土着的な宗教に、彼らのデザインは似合わない。これは自分でやるしかないと思ったわけです。
ところが現代建築風に考えていくと、かならずだれかの作風に似てさてしまうわけですね。金属板を使うと、伊東さんや原さん風になる。打ち放しだと安藤忠雄さんになってしまう。ですから、その路線はやめよう、田舎の路線にしようと思ったわけです。ただ、へタをして田舎の蕎麦屋のような民芸タッチになるのもいやで、いろいろ考えた結果、自分が今まで見てきた建物の中で、いちばんいいなと思ったエッセンスを集めて、それを生かそうと考えたわけです。
というわけで、ぼくがつくった建物を見ていただく前に、自分が今まで見てきた中でいちばん感動したものや、建築史家として、世界で自分がいちばん最初に見たと思っているようなものを紹介したいと思います。