アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
ガラスが特別に好きなわけではないというと、みなさんに嘘だといわれるのですが、決してそうでもありません。ただ、ガラスは光を反射することから、ほかの材料とは少し違ったヴォリューム感を生み出すということに興味をもって、ガラスを使ってきました。いくぶんガラスを使った建物が連続してしまいました。また、ガラスというのは自分だけで独立している材料ではないので、どのように使われるかによって見え方が違ってくる。それでいろいろ試してみたというところもあります。例えば、後ろもガラスであればインテリアは暗く見えますし、後ろが白壁だったら中は明るくなります。また、天気によって意外な見え方もします。
この建物を設計する際に考えたことは、プランが曖昧で全体がなんとなくつながっているようなものをつくりたかったということです。以前は、どちらかというと廊下をつくらないで要求条件を解こうとする傾向があったように思います。人が自由に歩けるワンルームから検討を始めて、その次に廊下と部屋が一体化したような、いわば動線だけでつくっていくというようなプランを考え、そのうちに完全に廊下をつくって、回廊のようにして目立たせるというようなこともしました。しかし、ここでもう一度、まったく廊下がないか、もう少し緩やかにつながるようなプランはできないかと考えたのです。
というのもデイケアセンターというのは、お年寄りが使うものです。横浜市ではこういった施設をつくる際に必要な部屋や、その面積、さらには動線計画などを規定しています。しかし、たまたまここは土地がものすごく細長くて変形していたものですから、その決められたプログラム通りにはどうやってもならないだろうということになりました。そこで思ったことは、休憩したりご飯を食べたりみんなで話し合う部屋や、廊下、トイレ、着替え室といった機能を、それほど厳密に区切る必要がないのではないかということです。すごくお元気な方もいらっしやいますし、もう少しゆったりとリハビリをされてる方もいらっしやいます。また、介護を必要とされている方もいらっしやいますから、すべてを一様に考えてしまうことには問題があると考えたのです。
ゆったりとくつろぐところがリビングだけでなくてもいいのではないか、お風呂上がりに脱衣室でゆっくりしたい人がいればそれでもいいのではないか、そういうことを考えると全体がズルズルとつながっていくようなプランが望ましいように思えてさたのです。それは廊下型かワンルームかというような極端な選択ではなくて、大きく扉を開けると広めのトイレがあって、奥の機械室にはそのまま行けるし、トイレを通らなくても、部屋なのか廊下なのかわからないようなところを通れば、その向こうの部屋にも行けるというようなつくり方をしてみました。
送迎車を建物中央に引き入れるため北側を5メートルほど開ける必要があったことと、両側の5メートルのよう壁の影からなるべく逃れるためから、長さ115メートル、幅7メートルの建物を敷地の真ん中に置いています。窓際に柱を設けずに、設備スペースや倉庫の役目を果たすコアが屋根を支える構造になっています。この幅の広いコアや幅の狭いコアを南北にずらして配置し、生活のスペースと通過するスペースとをなんとなくつくっています。室内にはなるべく光を入れようと、南北どちらの外壁にもガラスを用いました。ただ北側は住宅と隣接しますので、ガラスにシルクスクリーンを施しています。コアにもガラスを用いていますので、その重なり方によってガラスの透明度が変化します。一見、黒く見えるガラスがありますが、これは外側に細い黒い線を入れたものです。そのため反射性が強まって昼間はほとんど顔をくっつけないと中が見えません。インテリアには同じような細い白い線を刷り、簾が垂らしてあるようなスペースが出来上がりました。自分が動いたりすることで、外の黒線と内側の白線が重なり合ってグレーに見えたり、モアレが起こったりします。夜は外の黒線が闇に紛れて、白い空間になります。
ガラスは掃除が大変なのではないかという質問をよく受けますが、ペンキとは異なり剥がれたりしないので、逆にメンテナンスが楽な材料だと思っています。最近はガラスを使うことで抽象性のようなものがどんどん高まってしまうことに危惧を抱いています。そうならないためには、もう少し具体牲のある材料を使ってみなくてはいけないのかと思っております。