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東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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妹島和世 - 自作について
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自作について

妹島和世KAZUYO SEJIMA


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金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館 平面図
金沢21世紀美術館 平面図

この美術館は、たぶん全国の美術館の中でもっとも展示室の数が多いのではないかと思います。それはこの美術館の規模が大きいということではなくて、小さい展示室がたくさんあるということです。このことは、計画に初期段階から加わっていらっしゃるキュレーターの長谷川祐子さんの意見です。つまり展覧会のたびに間仕切る壁を移動するのではなく、ひとつひとつプロポーションのいい部屋をつくっておいた方がいいのではないかということです。毎回壁を立てるというのは予想外にお金がかかりますし、部屋として完璧でない。はじめからきちんとプロポーションを考えてつくった部屋はアーティストの創作意欲を鼓舞するということです。ですから、その都度、大きな部屋を分割することはしないで、その代わりに小さな部屋、基本的には平面が一対一か一対二か一対七の黄金比となり、天井が四、六、九、十二メートルになるようなものをたくさん用意したのです。私たちとしては、それをどう並べるかということにとても苦心しました。この計画においても、ひとつ動かすと全部が変わってきてしまうので、作業を何回も繰り返しながらまとめました。最終的にはバラバラの展示室が廊下でつながれていくというものになっています。

はじめ、廊下の幅は厳密にすべて同じようにしたいと考えていたのですが、ある時にカローラが中を自走できないとまずいという意見が出てきて、部分的に変更を加えていきました。そのほかにもさまざまな理由で、廊下の幅が場所によって変わってきてしまいました。廊下の幅が違うのはきたないプランだというのが、それまでの事務所のコンセンサスだったのですが、そうでもないと思うようになりました。微妙に幅の違うところがあったりするのも、面白いと考えられるようになって、結果、プランがまとまっていきました。

展示室がたくさんあって、廊下の幅もまちまちということは、ある場所からある場所に行くのに決まったルートで歩かなくてもいいという利点があります。もう一度あそこに戻りたいと思ったときに同じルートを通るのではなくて、パッとスキップして戻ることができたり、あるいはここはつまらないなと思ったら通らないで行けるというようなよさがあります。しかし、一方でわかりにくく、迷いやすいということがあって、どこまで単純にしてどこまで多様にするかということで計画に時間がかかりました。

大きい展覧会のときにはすべての展示室を使います。また逆に展示室すべてを別々に使って複数の異なる展覧会を同時に開催することもできます。また展覧会によっては、ルートをつくりいくつの部屋をまわって展示を楽しむというように、企画によって美術館の性格も、あるいは領域も変わってしまうようになっています。

市長は割烹着で来られる美術館ということをずっとおっしゃっていましたので、なるべく気取らない敷居の低いものにしようと、交流館と美術館を一体化して提案しました。交流館というのは、小さな図書室や子ども創作室とかホールが入る施設ですが、コンペで提出されほとんどの案は美術館とこの交流館を別々にするものだったようです。ひとつにしたことによって生じる問題は、ひとつの建物をどのように交流館と美術館とにわけるかということですが、この問題は中心と周辺という考え方で解決しました。建物の中心部に現代美術館を、それを囲む周囲の部分に交流館を設け、両者は可動のガラス扉などで区切られます。つまり、美術館の領域が変わると交流の領域も変わります。

この敷地は市の中心にあるものですから、いろいろなところから人が出入りできるよう、外形を円に決めました。現在、エントランスを三つ、さらに予備的なものをもういくつか用意しています。また、交流館と美術館を仕切る扉をガラスでつくり、なるべく視線が通るようにしました。視線を通すことで自分の位置と外部との距離をわかりやすくしているのです。また、中庭も四つ設けました。これも展覧会にも使われます。すべて縁のある庭ですが、その性格は変えようと思っています。この中庭が展示室を少しずつまとめるような働きをしてくれればいいなと思っています。この中庭は必ず無料ゾーンと有料ゾーンの間にあって、美術館に用がない人でも、たまたまここに来たら庭越しに美術館が見えるという構成です。

ここはもともと金沢大学付属小・中学校があったところで、いろいろな記念碑や銅像があります。はじめはそのいろいろな記念碑や銅像を、用水沿いにまとめたり、入口付近にまとめたりして、景観に生かそうと考えていたのですが、今はそれらを公園全体にばらまいて、その歴史性を積極的にランドスケープの中に入れていこうと考えています。

敷地自体は広いのですが、そうはいってもこれだけ大きな建物のまわりに広大な公園がつくれるほど広くはありませんし、割烹着で来られるようなということもあって、日常の延長にあるようにしたいと思い、交流ゾーンについては天井高をなるべく低くしようと四メートルにしました。なるべく日常の延長として考えられるスケールでつくろうとしています。それに対して、展示室はどうしても展示室ですので、特徴的なプロポーションが必要だということで、展示室のヴォリュームだけは飛び出ています。飛び出た展示室の上部にはトップライトを設けて、自然光を入れるようにしました。

内部を歩いていくと、展示室とそのほかの空間を交互に出入りすることになります。廊下も休憩所のようであり、時には展示にも使われるようになっています。展示室から展示室に移動する途中からは、必ず外部や中庭が見えるという関係をつくり、その関係がプランを規定するよう全体を考えました。

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